「貧しい国」日本…1億総貧民? 貧困化・後進国化した先進国
ちょくちょく「景気は回復している」とは聞きますが、目立った景気の良さが見えない昨今。
おまけに新型コロナの影響で各経済が大打撃を受ける始末。
そんな過程を得て、現在の日本は「先進国」から「後進国」へとランクダウンし始めてるんじゃ? と感じる今。
では、どうして景気が回復したように見えないのか。
労働者の平均年収
景気の回復の有無で分かりやすい指標となる「平均年収」。
まず年収の定義ですが、要はボーナスを含む給料の内の手取りの総額です。
例えば月給が30万円でボーナス1回で2か月分となると、1年の給料の総額は14か月分で計420万円。
そこから税金や保険料で2~3割が差っ引かれるので、この場合の年収は300万円と少しくらいになります。
結論からいうと正社員の平均年収は450万円ほどで、近年は増加傾向にあるようです。
ただ増加傾向にあるといっても、それはここ数年といった直近から見た話。
実際のところはようやく元に戻り始めた、といったところ。
過去40年程を見て一番平均年収額が高かったのが、1992~2001年頃の450万円以上。
それから下降気味となり、2011年頃には410万円ほどまで下がっています。
そこから持ち直し始め、下がり始めから20年経ってようやく過去の年収額に追いつき始めてます。
が、勘違いしてはいけないのが、全ての人が450万円貰っているわけではないということ。
「平均」はあくまで「平均」。
正社員10人いたとして、1人が年収2500万円、残りの9人の年収が200万円ほどだとしても、計算上は平均450万円になります。
では年収額に応じた人数分布はどうなっているのか?
結論から言うと正社員全体の半数の年収は400万円以下、年収200万円以下の人も2割近くいる状態です。
国税庁発表の「業種別の給与階級別分布」によると、年収が300万円~400万円の間の人がかなり多いとのこと。
引用:国税庁 業種別の給与階級別分布
特に年収が少ないのが「サービス業」「卸小売業」「裁縫工業」「農業」の4職種。
これらの職種は年収400万円以下だと6割~7割、300万円以下だと4割~6割、200万円以下だと3割ほどの人数。
農業に至っては年収が200万円以下の人が4割もいる状態です。
つまるところ全体の6割ほどが平均年収に届いていないことになります。
年収が多い職種は「金融」「化学工業」「機械工業」などが当たりますが、それでようやく半数が平均年収以上といった有様です。
おまけにこれは「正社員」の平均年収であってフリーター・派遣社員などは度外視した結果です。
そのフリーターやパート・派遣社員の平均年収がこちら。
派遣社員…約360万円
最低時給額が少し引き上がったとはいえ、アルバイトやパートの時給は大抵1000円前後、高くても1200円程です。
そのため少し高めの時給1100円として週30時間労働で計算しても、平均年収は約170万円ほど。
そして「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の要約(28P)」によると、2021年度における日本の労働者数はこうなってます。
種別 | 人数 |
---|---|
正社員 | 3565万人 |
派遣 | 140万人 |
パート | 1018万人 |
アルバイト | 438万人 |
もっと他にも細かい種別で労働者がいますが、身近な種別での労働者数はこうなります。
そして「正社員・派遣社員・パートタイマー・フリーター」という全体で計算してみると、平均年収は約360万円まで落ち込みます。
しかし先ほども書いた通り、実際には全体がこれほど貰っているわけでもないため、実際はこれより低い年収の人が大半でしょう。
さらに絶望的なのがこの金額から各種保険料が引かれるため、実際にはもっと少なくなります。
年金保険料や所得税・消費税など全体の2~3割ほどが税金として差っ引かれます。
残りが自由に使えるお金というわけですが、家賃や食費・光熱費など絶対に必要なお金も引いていくとさらに減少。
月収が20万円以下の人も珍しくない中、そういった必要なお金を払ったら何も残らない人も多いです。
産業・経済というものは、絶対に必要なものだけにお金を使えば回るわけではありません。
アクセサリー・レストラン・旅行といった贅沢なものも含めてお金が回らないと経済は活性化しません。
それなのに、そういったことにお金を使えない人が増えれば、経済が停滞するのも当然でしょう。
新型コロナの世界的蔓延で不幸にも証明されてしまっていますし。
平均年収でも「貧しい」
皆さんは「貧しい」と言われる年収額はいくらかと思いますか?
例えば、自力で働けない人が受ける「生活保護」で受給できる額は、1人だと10万~13万円。
夫婦2人でも15万~18万円となってます。
そのため「貧しい」代名詞の生活保護受給者の年収(?)は約150万~200万円となってます。
そのため平均年収の450万円はそれなりに裕福かと思われますが、広義的に見ると年収400万円でも貧しいとする風潮もあるようです。
これは「子供を育てることができるか?」という点を重視した結果です。
国の将来や現状を維持するためには、最低でも1家庭で2人子供が欲しいところ。
しかし平均年収くらいの額では子供2人を育て上げるには到底足りません。
・食事などの生活費の「養育費」
1人の子供を成人するまで育てるには計2000万~3000万円は必要といわれています。
つまり子供が産まれてから年間平均100万~150万円、月々最低10万円は余分に必要になります。
しかしここに夫婦の分の生活費や、住む場所の家賃などが加わります。
家族3人暮らしで最低必要な家は「40平米」「1~2LDK」といわれています。
そして東京都でこの広さの家の家賃となると月額約20万円。
一人分の食費を月3万円としても、夫婦で5~6万円。(子供の分は先の「養育費」に含む)
そして保険料や住民税などの諸々。
合計すると月40~50万円は必要な計算で、月収40万円の年収ともなると600万円は超えています。
つまり夫婦で子育てしようと思うと、年に600万円以上の稼ぎがないと立ち行かないということになってきます。
年収は手取りの総額なので、実際の年収は700万円以上の計算になります。
住んでる地域などでもっと増減しますが、平均年収での子育てはギリギリアウト…どころかモロアウトという家庭も多いです。
現実として、結婚相談所でも「年収600万円は最低ライン」という女性も多いと聞きます。
…まあこれに「性格」「顔」「年齢」なんてもの加わってきますが…。
しかしさっき書いた通り国民全体での平均年収は360万円ほどで、過半数がこの状態。
年収600万円でも最低ラインなのに、こんな状態では「貧しくない」とはとても言えないでしょう。
「1億総貧民」なんて揶揄されても仕方ないです。
これを書いている時に「年収200万円で豊かに暮らす」という本が、ツイッターなどで炎上することになりました。
理由は内容が「使ってよい総額が200万円」「実家が米農家なので食費が浮く」といった、一般的な思考とは少々離れた内容だったりしたため。
他にも「そもそも年収200万円の人じゃこの本は買えない」といった意見も。
こうした「低年収」向けの本はいくつか販売されていますが、この事実の意味がわかるでしょうか?
出版社はその本の収益が見込めないなら、当然出版なんてしません。
しかし実際はこうした本が出版されている事実。
要は、本を買う人が多い=低年収の人が多数いる、と出版社が認めているようなものです。
置いてけぼりの日本
日本は世界的に見ても経済の停滞が著しい国でもあります。
先ほどの平均年収が450万円という話。
これだけ見ると「個人でならまあまあじゃない?」と思うでしょう。
実態はともかくとして、徐々に回復傾向にあるのは事実です。
しかし他の国と比べてみたらどうか?
日本は諸外国に比べて年収が全くといっていいほど上がっていません。
先進国として名前が出やすい欧米やヨーロッパなどの、2010年と2020年の平均年収を比べてみました。
経済的に打撃になった新型コロナが流行する前として2020年を基準に参考にしてます。
※1ドル110円・1元15円として計算
2010年 | 2020年 | 成長率 | |
---|---|---|---|
日本 | 408万円 | 433万円 | +6.1% |
アメリカ | 536万円 | 763万円 | +42.3% |
カナダ | 492万円 | 608万円 | +23.5% |
イギリス | 501万円 | 518万円 | +3.3% |
ドイツ | 490万円 | 591万円 | +20.6% |
オーストラリア | 574万円 | 607万円 | +5.7% |
デンマーク | 633万円 | 642万円 | +1.4% |
中国 | 54万円 | 86万円 | +59.2% |
このように複数の国と比べてみると、日本がどれだけ経済的に遅れてきているかわかると思います。
成長している国では20パーセント以上の成長率が普通。
中国に至っては1.6倍も年収が増えるという高成長を見せています。
「日本以下の成長率の国も多い」なんて意見もあるでしょうが、そういった国でも元々の年収が日本より多いという事実。
物価など日本と比べられない点もあるでしょうが、忘れてはいけないのが日本は重税国家として有名だということ。
基本年収は手取り額の総額ですが、そこから個人別に様々な税が課せられ搾り取られています。
こうしたことから、日本ではどれだけ賃金が増えていないかわかると思います。
会社が儲かっても意味がない?
日本企業が儲かっているかはGDP(国内総生産)で分かります。
簡単なおさらいとして、GDPは企業が稼いだ売り上げから原材料や運送料・社員の給料などを引いた純粋な利益のこと。
このGDPが高ければ高いほど儲かっている会社となります。
かなり単純な例えとして、A社とB社の純利益を比較。
B社…売上5000万・経費2000万 → 純利益3000万円
売り上げではA社の方が上ですが、最終的に稼げた利益はB社の方が上です。
つまりGDPを高くしたいなら、経費を安く抑えた上でたくさん稼ぐことが重要になります。
そして日本のGDPですが、2021年は約541兆9000億円。
10年前の2011年のGDPは約497兆4490憶円なので、10年前より50兆円は稼げてることになります。
ではどうして庶民の生活が目に見えて改善されないのか?
それは会社が不景気を恐れて稼ぎを貯め込んでいるから。
企業が利益を貯め込んで放流しないことを「内部留保」(利益剰余金とも)といい、これをされると社員の給料は上がりにくくなります。
そしてこの内部留保ですが、年々増加傾向にあることも不景気の感覚の原因のひとつです。
財務省発表の「法人企業統計調査」によると、近年の全企業(金融・保険含む)の内部留保の推移はこうなってます。
単位:億円
正確な金額がこちら。(単位:億円)
年度 | 企業 | 金融・保険 |
---|---|---|
2012 | 3,044,828 | 375,298 |
2013 | 3,279,557 | 446,707 |
2014 | 3,548,774 | 488,223 |
2015 | 3,778,689 | 513,468 |
2016 | 4,062,347 | 543,775 |
2017 | 4,464,844 | 609,610 |
2018 | 4,631,307 | 628,859 |
2019 | 4,750,160 | 635,612 |
2020 | 4,843,848 | 663,544 |
引用:法人企業統計調査
一般企業・金融・保険の内部留保は、2012年度の約400兆円から年々増加し続け、近年では550兆円を超える金額に。
要は昔より稼いだ分は内部留保に回して貯め込んでいる状態です。
GDPがいくら高くなって(会社が儲けて)も、その稼いだお金が社員に下りてこなければ意味がありません。
不景気が長かったため、また過度な不景気が来たとき用に溜め込む心理は理解できます。
しかしお金が市場に回らなければ、国民が使えるお金が足りなくなるのは当然です。
これも日本の衰退の一因となってます。
トップしか稼げない
「稼ぎたいなら企業しろ」。
ネット上で低年収を嘆いている人に対して、ほぼ確実に投げかけられるこの言葉。
実際に自分で企業すれば社長となり、そのまま高収入が約束されるので当たり前ともいえます。
…まあ企業して成功するまでのリスクなどは多いですが…。
ただ、この言葉にはもっと裏の意味があります。
それは搾取する側に回らなければお金は稼げない、という意味。
現在の日本では、例え正社員でも「奴隷労働者」なんて揶揄されることも珍しくありません。
ホワイト企業・ブラック企業に限らず、です。
ハローワークなどの求人を見てみると分かりますが、都会でもない限り年収200万円ちょっとが当たり前。
生活保護の受給額より安い求人なんて珍しくもありません。
私自身田舎に住んでますが、手取り11万円なんて仕事をしたこともあります。
「大企業の正社員でもなければ負け組」なんて過激な言い方もあるでしょう。
ところで、この「トップ層だけが裕福で、あとは奴隷」なんて状態、聞き覚えがありませんか?
中途半端に資本主義で発展した発展途上国と同じです。
世界には、一部の富裕層が富を独占し、あとの国民はそのおこぼれで生活している過酷な国はまだまだ存在します。
今はまだ低年収でもギリギリ生活できるくらいですが、少しでも下がれば発展途上国と同じになります。
実際一日一食といったレベルの生活をしている人も少なくありません。
…というよりホームレスが存在している時点でお察しでしょう。
戦後の日本にはスラム街があったそうですが、日本に再びスラム街ができる可能性も出てきているといえます。
輸入頼りの日本
日本全体で稼いでいる金額はGDPで表されますが、実際にはお金を循環しているだけで本当にお金が増えているわけではありません。
例えばAさんがBさんから1万円で物を買ったとして、そうするとAさん→Bさんへと1万円が移動します。
そしてBさんがCさんからまた1万円で物を買うと、Bさん→Cさんへと1万円が移動。
実際には1万円がAさん→Cさんへと移動しただけですが、かなり大雑把ですがGDP上では「2万円」と表されます。
つまりGDPの本質としては「国内でどれだけお金の循環があったか」となります。
しかしこれでは国が保有するお金の総額は変わりません。
ではどうやれば国のお金を安全に増やせるのか?
それが「輸出」です。
海外へと製品を輸出し外貨を獲得することで、国が保有するお金が増えていきます。
しかし日本は海外から材料を輸入し、それを使って製品を作って輸出しているため、なかなか輸出で稼ぐことができません。
それどころか、円安などが起きると輸入額の方が高くなってしまうことも。
例えば、国が発表している「財務貿易統計」によると、2022年4月のみでの輸入・輸出額がこちら。
輸出額:8兆762億円
差引額:▲8392億円
…見ての通り赤字です。
ひと月単位で何千億円という損失が発生していることになります。
…まあこの時期は新型コロナ・ロシアとウクライナの問題・それに伴う円安等と、色々あった時期ではありますが。
ただ日本は海外へ売る製品の材料の他に、食料や石油・ガスといった電気を作る材料といった、ライフラインに必要なものも輸入しています。
そのため円安になると途端に輸入額が引き上がってしまいます。
そして例え黒字になったとしても、「輸出額が輸入額の2倍!」なんて極端な結果にはなりません。
良くて精々1~2割ほど増えるだけです。
そのため輸出によって稼いだとしても、国内のお金は年間でも10兆円ほどしか増えません。
先ほど企業の内部留保の金額を書きましたが、その金額の2パーセント以下です。
これではいつまでたっても国内で使えるお金は増えません。
仮に輸入で儲けたとしても、その大半は内部留保などに回されるため、結局経済に循環するお金も少なくなるのが現状です。
それどころかロシアによるエネルギーインフラの停止によって、開始から1か月足らずで国内エネルギー不足が表面化する始末。
電気代・ガス代が軒並み上がり、石油が関わる諸々の製品の物価も増加。
輸入に頼っているリスクが明確に出てきています。
個人の借金:1000万円
2022年時点において、私も含めて一人当たり1000万円近い借金があります。
「お金を借りたことなんてない」と思うでしょうが、これは日本が他国にしている借金です。
その額約1300兆円(2021年時点)
内約は、日本国家として1070兆円、地方だけでも200兆円以上にまで及びます。
…というより、今この瞬間もリアルタイムで借金メーターが増加し続けているといえます。
国家運営に必要な経費(公務員の給料・公共事業の費用等)は税収で賄われるのが基本です。
しかし日本では経費以上の税収は得ておらず、毎年税収以上の費用を計上して国家運営しています。
では足りない分のお金はどうするか?
そこで他国への借金です。
日本は毎年「国債」というものを発行し、他所に借金をして国家運営をしています。
国債というのは、簡単にいえば借用書みたいなものと認識していただければと。
国債を買ってもらっている(借金をしている)大半が日本銀行ですが、他にも色々なところで国債を発行してます。
地方を除いた、日本国家としての国債を発行している対象とその割合がこちら。
2021年での国債総額は1,074兆2,288億円だったので、国債の内の770兆円を日本にある銀行が。
次にお金を持っている生命保険・損害保険関係の企業が210兆円ほど。
そして85兆円ほどを海外の国々、75兆円を年金関係、一般人からすらも13兆円ほど。
こうした形で借金してます。
基本的に国内で完結した借金状態ですが、その分しわ寄せは国民全体に普及します。
日本の人口は約1億2600万人なので、1人あたり約1000万円くらいの借金をしていることに。
日本は一部「支払期限の国債(借金)を返すために新たな国債(借金)を発行している」状態で、借金地獄のテンプレートみたいな現状です。
では借金が膨れ上がりは酸すればどうなるか?
その場合は「デフォルト(債務不履行)」と呼ばれる事態になります。
2015年にギリシャが先進国初のデフォルトを起こしたことは有名で、覚えている人もいるかと。
もしデフォルトが起きると、まずは国債を購入していた銀行が破産し、国民の預金から負債が補填されるようになります。
2005年に普通預金などの一般預金は定額保護されるようになりましたが、それがどこまで機能するかは疑問です。
そして政府が持つ財産(税収など)も差し押さえらるようになるので、政府自体も機能しなくなります。
円も信用(価値)を失い急激な円安になるので、輸入・輸出で壊滅的な打撃を受けます。
先述の通り日本は輸入に頼った生活をしているため、国民、ひいては国家も壊滅状態になります。
そうなれば、あとは一部の発展途上国のような無政府状態に一直線です。
「1000兆円借金してても今大丈夫なら、今後も大丈夫じゃ?」と思う人もいるでしょうが、それは楽観的すぎるかと。
現状の国債の総額は日本の保有する、それこそ企業・一般人が持つ貯金などの資産以上に膨れ上がっています。
つまり実質日本では国債を返しきれない事態に陥っています。
そしてもしどこかの国、それこそアメリカに「日本国債はもう買わない。貸した金を返せ」なんて言われれば、返済は困難といえるでしょう。
つまり日本の運営はいつ破綻してもおかしくない、薄氷の上で成り立っている状態といえます。
お金持ちほど経済を止める?
お金を持っている人ほどお金を使わないという状況があるのは知ってますか?
普通ならお金持ちほどお金を良く使うと思うでしょうが、そうでもないパターンがあります。
それが貯金に回してしまう場合。
お金持ちほど貯金額も高いのは当然ですが、これは企業の内部留保と同じ状態といえます。
要は「経済に循環しない・使わないお金」が個人でも発生していることに。
経済は集団で回すものでもあるので、どこか一部でも停滞すれば不景気の一因になりかねません。
ついでにいうと貧乏人ほどお金を良く使っているのはご存じでしょうか?
例として年収2000万円の人が1人、年収200万円の人が10人いるとしましょう。
それぞれ年収の総額としては2000万円・2000万円で同額です。
この場合使われるお金の内約はどうなるか?
年収2000万円の人なら結構な贅沢をしてもかなりの額、それこそ年間数百万円くらいは貯金に回せるでしょう。
しかし年収200万円の人は?
生きるのにギリギリな生活の人ではとても貯金なんてできません。
収益のほとんどが食費や光熱費などの生活費に消えていきます。
逆に言うと年収が少ない人ほど、稼いだお金のほとんどを経済に放流していることになります。
1人単位で見るとそうでもありませんが、低年収の人が多数の状況ではこういった状態になります。
つまり経済に回しているお金の総額は、お金を持っていない人の方が多い事になります。
記事冒頭の年収の項目で出した年収の階級分布表をもう一度。
引用:国税庁 業種別の給与階級別分布
そして総務省が発表している、2020年度における貯金額の分布がこちら。
全体の平均は1791万円ですが、数そのもので見た場合の中央値は1061万円。
高所得層の少数が平均値を押し上げているため平均は高く見えるものの、実態としてはそれより700万円近く低くなります。
どれだけ高所得層が貯金に回しているかがわかるかと思います。
ちなみに中央値は貯蓄がゼロの人を省いて計算しているので、実際はこれより低くなります。
企業だけでなく個人レベルでも内部留保が発生しているため、より経済の停滞に拍車をかけていると思われます。
上は下の気持ちがわからない
生活が豊かな人ほど困窮している人の気持ちは分からないと断言できます。
そのため国会議員や企業の役員といった高給取りの人は、年収200万円以下といった人がどんな生活をしているかなんて知りません。
ただこれは富裕層だけではありません。
基本的に自分より下の生活をしている人の気持ちは理解できない、と言った方が良いかと。
それこそホームレス経験者でもない限り。
先ほど「年収600万円が最低ライン」なんて書きましたが、言い換えれば「年収600万円でようやく普通の人」という認識にも取れます。
それ以下の年収の人が珍しくもないのに、こんな発言がまかり通るのは現実が見えていない証拠です。
どんな生活をしているかなんて想像もできないでしょう。
かなり昔ですが、2008年に政治家の麻生太郎氏の「カップラーメン1個400円」発言を知っている人もいるでしょう。
そういったものを買ったことどころか見たころすら怪しい人ではこんなものです。
最近では2022年の物価高上昇において、日本銀行総裁の黒田東彦氏が「市民は物価上昇を受け入れている」発言。
物価が上がってうれしい人なんて稀なのに、この発言です。
日常で経験しやすいのは「上の人は現場を知らない」なんて場合。
現場に立ち入ることすら稀な上司が、一歩的な思い込みなどで業務を「改善」して、かえってパフォーマンスが悪くなるなんてザラでしょう。
「住んでる世界が違う」といってしまえばそれまでですが、そういった層が誰かを動かす・多くの影響を与える立場にいるのが現状です。
例え善意だとしても、下の状態を把握せずに引っ掻き回して事態が好転することなんて稀でしょう。
凋落し続ける日本
様々な要因があるとはいえ、今の日本が停滞、あるいは世界経済から置いて行かれている感は否めません。
最悪のケースの国家破綻の可能性も。
ここまで来ると一市民レベルでしかない個人ではどうしようもありません。
例え集団で賃上げ要求をしたところで、今の時代では無視されるか最悪解雇されて終わりです。
外国人労働者の受け入れ増加案まで出ていますし、そうでなくても「イヤなら代わりはいくらでもいる」というのが現実。
それを何とかできる人でも、自分の生活が保障されるなら危険な橋は渡らない。
それどころか私腹を肥やす、なんて輩だっているでしょう。
かつて今は亡き安倍晋三氏が唱えた「一億総活躍社会」どころか、「一億層貧困社会」へと突き進んでいるのかもしれません。