なぜ万年血液不足? 献血された血液はどうなっている?
献血会場近くの看板に「血液:大変不足してます!!」なんて書かれているのをよく見ます。
確かに献血されないと輸血などで消費した血液は補充されませんが、いつまで経っても解消されないのが不思議でした。
では献血された血液はどのように使われているのか?
献血された血液が輸血されるまでの流れを調べてみました。
血液の保存方法
採血された血液はいくつかの工程を得て保存・使用されていきます。
大雑把な流れがこちら。
↓
②検査
↓
③製剤化
こうした流れを得て、採血された血液は輸血用血液として管理・保管されることになります。
①献血
献血と一言にいっても、実際には2種類の献血方法があります。
・成分献血
献血では大抵「全血献血」という方式が取られ、200ml・400mlの献血方法が設定されています。
献血バスでは主にこちらの方法。
ただ病院などの献血ルームといった、設備が整った場所では「成分献血」という献血方法も選べます。
成分献血では「血漿」「血小板」の成分のみを献血。
赤血球は回復するのに時間がかかるため、透析のように特定の成分のみを抽出して、赤血球を残した血液を体内に戻すというやり方です。
②検査
当然ながら、安全のために血液の状態の検査もします。
血液内の成分検査はもちろん、血液型検査・感染症検査など、この血液が安全に使えるかチェックします。
献血した人は、ここでの検査結果が後日郵送されてきます。
ここで検査した血液は11年間保存され、使用された血液に異常があった場合再検査されることになります。
③製剤化
採血された血液は各成分ごとに分けられ、それぞれで製剤化されます。
輸血というと「献血された血液をそのまま使う」というイメージがあるかもしれませんが、現在は各成分に特化した「成分輸血」方式がメインとなっています。
これは後述する「血液の成分の寿命」も考慮されています。
基本的には以下の4種類の成分で分離・凝縮され、各状況によって使用されます。
・血小板…血小板の不足によって出血が止まらない等
・血漿…複数の原因で出血が止まらない等
・全血(赤血球・血漿)…大量出血により、各成分が不足する等
このように輸血が必要な患者の状態に合わせることで、血液の無駄を無くしています。
※血漿…血液の液体部分。イメージ的には塩水の「水」の部分。
血液の寿命
先程も少し触れましたが血液にも寿命があり、それを超えると成分が壊れて使用できなくなります。
当然冷凍保存…というか、各成分に適した温度で保管されるんですが、それでも限界はあります。
血液の各成分によって寿命は違い、最長で1年、短いと4日ほどで使えなくなります。
血液に含まれる各成分の寿命と、ついでに保存する際の温度がこちら。
寿命 | 保管温度 | |
---|---|---|
赤血球 | 28日 | 2~6℃ |
血小板 | 4日 | 20~24℃ |
血漿 | 1年 | -20℃以下 |
全血 | 21日 | 2~6℃ |
血漿(液体)以外が冷凍保存でないのは、凍ることによって細胞が膨張し壊れてしまうのを防ぐため。
酸素を供給するために不可欠な赤血球ですが、それですら1か月持つかどうか、といったところ。
血小板に至っては献血後1週間もしない内に使い物にならなくなるほど。
血漿は1年もつものの、事故などによる大量出血で必要になりやすいのは赤血球なので、役割と寿命がかみ合ってません。
寿命を超えた血液は廃棄せざるを得ないため、残念ながら血液のロスが発生していることになります。
1日に使われる血液の量
血液にも寿命があり、それがかなり短いものというのは理解してもらえたかと思います。
ではいったいどれくらいの量の血液が必要とされているのか?
厚生労働省の発表では1日に輸血を受ける人の数は、実に3000人。
輸血を受ける人には、事故などによる大量出血や、極度の貧血など、理由はさまざま。
比較的軽度なイメージの貧血でも、1度に消費される血液量は40ml。
仮に3000人全員が貧血での輸血を受けているとしても、1日の消費量は最低でも120000ml(120リットル)と膨大な量。
400mlの献血換算だと300人分の血液が使われる計算です。
イメージ的には一般的なバスタブが200~300リットル入るので、バスタブ半分ほどの血液量になります。
もちろん事故などによる大量出血なら一度の輸血量も膨大になりますし、血液型によってはさらに限定される場合もあるでしょう。
仮に事故などで大量出血した場合、命に関わる出血量は1リットル以上なので、一度にそれくらいの量の輸血を行うこともあるでしょう。
しかも患者の血液型に合った血液が無ければ致命的になるため全ての血液型を一定量以上ストックしておかないといけません。
もちろん血液型によってはストックしておく量に偏りは出るでしょうが、血液の寿命を考えるとどれだけあっても安心できないのが現状でしょう。
人工血液が待たれる
血液の寿命が短い。
大量の血液が日々使われている。
血液型という、使用できる血液に偏りがある。
献血でしか血液を補充できない。
これらが、血液不足が常態化している理由になります。
人工的に血液を作れれば大半の問題は解決しますが、残念ながらまだありません。
特に赤血球と血小板を代用するのが難しいらしく、今だ実用化までは至っていません。
ただ研究は継続して行われており、概要部分ならかなり煮詰まって開発されているようです。
簡潔にいうと廃棄予定の血液のヘモグロビンを元に赤血球の代用品を作る、というもの。
使えなくなった血液を再利用できるので無駄がなく、リーズナブルな方法となっています。
また犬用の血漿の開発には成功しているため、研究を重ねれば人間用の人工血液の製造も目途が立ち始めているようです。
ただそれもいつになるかは分かりません。
その日が来るまで機会が、余裕がある人は、献血をしてみましょう。
意外に景品などもあったりするため、まったくの無償奉仕というわけでも無いですし。
献血やその景品に興味がある人は体験談をまとめたので、こちらの記事を読んでみてください。