「紅麹」とは何なのか? 原材料や使い道・使われている食品は?
健康被害を引き起こした紅麹サプリメントと、その回収騒ぎの余波。
問題となったサプリメントだけでなく、小林製薬が紅麹を卸していた別会社にも問題が波及。
紅麹そのものが原因というわけではありませんでしたが、これで紅麹に一気に関心が向いた事件かと思います。
そして事件発生直後にほとんどの人が気にしたであろうこと。
「紅麹って何?」。
「何に使われているの?」。
一体紅麹は日本国内でどのように扱われているのか。
紅麹とは?
紅麹は「麹」という名前の通り、発酵食品の一種です。
紅麹は「ベニコウジカビ」という菌が米を発酵させたもの。
ベニコウジカビは麹菌やアオカビと同様の不完全菌で、基本的に米を発酵させるのに使われています。
「紅麹を食べる」という意味でなら、実に2000年以上の歴史を持ちます。
中国では古くから紅麹を食し、その健康効果を利用してきました。
ただ、ベニコウジカビの菌株の中には人体に有害なカビの毒「シトリニン」を生成する種類もあり、海外では規制されている国もあります。
しかし日本で使われている紅麹はシトリニンを生成しない株が使われており、これが発見されたのは1979年。
安全な菌株の量産は1985年。
日本で「完全に安全」として食品利用され始めたのは2016年と、意外と最近だったりします。
この安全な紅麹を濃縮したものがサプリメントとして販売されています。
紅麹の使い道
紅麹の使い道は、主にサプリメントと着色料の2種類。
甘酒などに使われる麹菌とは別種なので、酒造りにはあまり使われていません。
紅麹には血中コレステロールを減少させる「モナコリンK」という成分や、「GABA」という血圧低下作用もあるため、これらによって健康食品として使われるようになりました。
ただ、日本での利用は紅麹菌が作る「ベニコウジ色素」がメインとなっています。
紅麹菌が発酵させた米は見事なまでの紅色をしているため、赤色の着色料としてよく食品利用されています。
本来赤い色をしていない食品の成分表記を見ると「着色料:紅麹」となっている食品も多いです。
例えばおにぎりの具材の紅鮭や明太子・かまぼこ・ソーセージといった、スーパーでよく見る食品に。
あるいはイチゴクッキーといった菓子類など、赤みを出したい食品にも使われていたりと多岐に渡ります。
ふと成分表を見て、ベニコウジ色素が使われている食品を見ることも珍しくありません。
ただ表記が「発酵調味料」としかされていない食品もあるため、実際ははっきり表記されている食品数よりも多くなるかと思われます。
「紅麹」と「ベニコウジ色素」は別?
紅麴から着色料となる「ベニコウジ色素」が作られますが、成分的にはかなり違いがあります。
健康サプリメントとしての紅麹は成分を全て濃縮したもの。
大してベニコウジ色素は紅色となる色素部分のみを抽出したもの。
別に紅麹で紅く染まった米を砕いて粉末化したのを使っているわけじゃありません。
ベニコウジ色素となるのは「アンカフラビン類」「モナスコルブリン類」と呼ばれる色素成分。
この色素部分のみを抽出して、着色料として使用しています。
そして重要な点として、先ほど「紅麹サプリメントの歴史は2016年から数年程度」と書きましたが、ベニコウジ色素の利用はそれより前から、という点。
紅麹サプリメントは紅麹菌とそれが生成する全ての成分を濃縮しますが、ベニコウジ色素はその内の少ない成分を利用するのみ。
そのため安全確認や安全な抽出技術の確立もしやすかったため、安全な紅麹菌株が発見されてから利用されています。
紅麹は安全…?
「日本の紅麹は毒を作らない」。
「紅麹とベニコウジ色素は別物」。
「食品利用は古くからされている」。
こうした点から、紅麹そのものに明確な有害性はない、と一応結論付けられるかと思います。
日本で使われている紅麹菌は遺伝子(ゲノム)解析で「毒物(シトリニン)を生成するのは不可能」といった解析結果が出ています。
そもそもシトリニンを生成する器官・機能そのものが備わっていないようで、物理的に不可能といった具合です。
実際、今回の紅麹サプリメントの騒動では「意図しない、紅麹とは無関係の毒物が混入した」ということになっています。
ただし、紅麹だけに限りませんが食品、特に発酵食品の場合は有害なカビや菌が繁殖しやすい環境なのも確か。
厳格な安全管理がされていなければ、いくら「この紅麹は安全」と謳っていても意味がありません。
過去にも幾度か似たような騒動は起きていますし。
結局のところ、安全管理は人任せになる点が多いので、完全に安全といえるものは無いといえます。
今回はサプリメントでしたが、何かしら継続して摂取している場合「いつもと違う」「違和感がある」「なんとなく体調不良」なんて感じたら、すぐに使用を止めておきましょう。