紙を折り続けると月へ到達できる…どれだけの大きさの紙が必要?
「紙を42回折ると月まで届く高さになる」というのを聞いたことがあるでしょうか?
しかし実際には数回折れれば良い方で、42回なんて折れません。
ただしこれは普通のサイズの紙の話。
とてつもなく大きいサイズの紙ならば、かなりの回数を折れると思う人もいるでしょう。
では月まで到達できる厚さにする紙だと、どの程度のサイズになるのか計算してみました。
「月に到達」の原理
最初に「紙を42回折ると月に届く」の原理を良く知らない人のために、詳しい解説。
原理は冒頭で書いたとおり、紙を折って厚みを作っていけば、最終的に月に届くくらいの厚さになるというもの。
さながら軌道エレベーターのごとく。
まず紙の厚さですが、基本的には0.1ミリメートルくらいとなっています。
・折り込みチラシ…0.06ミリメートル
・新聞紙…0.06ミリメートル
日常生活でよく触れるだろう紙の厚さはこんな感じ。
対して地球から月までの距離は約38万キロメートル。
ミリ換算だと380,000,000,000(3800億)ミリメートルとなります。
では実際に各紙を38万キロメートルになるまで折る回数はこうなります。
チラシ・新聞紙…43回(約52万キロメートル)
折り込みチラシや新聞紙では42回目で約26万キロメートルと足りないので、もう一回折るハメに。
とりあえずこれだけ折れば月まで届くワケですが、実際のところは数回程度折って限界になります。
私も試しに折ってみましたが、コピー用紙で6回が限界でした。
どれだけのサイズが必要?
では実際問題、どれだけの大きさの紙なら42回も折れるのか?
いつだかテレビ番組で一辺が数メートルの紙を折っていく様を見ましたが、それでも10回もいかなかったかと。
ちなみに、10回だけ折った紙の厚さでもおよそ10センチになります。
厚さが増すごとに紙も小さくなっていくので、折り始めの最初はかなり大きな紙が必要だと分かるでしょう。
そこでサイズを知るのに重要になるのが一辺の長さと厚さの比率。
極端な話、厚さが1ミリでも長さが0.1ミリの紙では折るに折れません。
しかし厚さが30cmの紙であっても、一辺が1キロメートルもあれば十分折れるでしょう。
このように長さと厚さがある一定以上の比率にあれば、どれだけ厚さがあっても問題なく折れます。
先ほどコピー用紙を6回折ったと書きましたが、この時の紙の長さと厚さはどうなっているのか?
まず分かりやすいように、コピー用紙を正方形にカットしました。
サイズは21センチ四方になり、これを何回か折っていきます。
折っていった結果、このサイズの紙では6回が限度でした。
6回折ったコピー用紙の現状
・厚さ…5.76ミリメートル(約6ミリメートル)
これ以上は折れなかったわけですが、逆に折れた5回目時点の紙の状態がこちら。
・厚さ…2.8ミリメートル
これから計算すると、紙の厚さに対して一辺の長さが約18倍はあれば順当に折り曲げ続けられるかと。
この理論で42回折った紙の厚さから逆算していき、最終的に一辺がどれくらいの長さの紙になるかを計算します。
42回折った紙は厚さが約39万キロメートル。
折る前の41回目の時点では19万5000キロメートルの厚さになります。
先ほどの理論から計算すると、この時点の厚さの紙をしっかり折るには、195000キロ × 18 で、一辺が351万キロメートルの紙が必要になります。
理屈としては、紙を広げるごとに折った一辺の長さが縦・横の順に倍になって行きます。
正方形の紙を折っていくと、正方形→長方形→正方形の順番で折られていき、偶数回で元の形に戻ります。(縮尺は変わりますが)
これらの事から考えて計算していくとこうなります。
折った回数 | 縦の長さ | 横の長さ | 厚さ |
---|---|---|---|
42回目 | 175万5000キロ | 175万5000キロ | 39万キロ |
41回目 | 175万5000キロ | 351万キロ | 19万5000キロ |
40回目 | 351万キロ | 351万キロ | 9万7500キロ |
… | … | … | … |
3回目 | 9201億2544万キロ | 1超8402億5088万キロ | 0.72ミリ |
2回目 | 1超8402億5088万キロ | 1超8402億5088万キロ | 0.36ミリ |
1回目 | 1超8402億5088万キロ | 3兆6805億0176万キロ | 0.18ミリ |
最初の紙 | 3兆6805億0176万キロ | 3兆6805億0176万キロ | 0.09ミリ |
計算の結果、月に届くまで安定して折り続けられる紙の一辺は3兆6805億176万キロメートルということに。
結論:紙を用意するのはムリ
計算上では、月まで折り続けられる紙を地球上で用意するのはムリでしょう。
一辺が約3兆6800億キロメートルの紙、これがどれだけの大きさかと言うと。
・地球の直径(約1万2700キロ)の約2万9000倍
・地球から冥王星までの距離(最長約75億キロ)の約490倍
・太陽の直径(約140万キロ)の約263倍
・太陽系の直径(約30兆キロ)の約0.8倍
このように地球はおろか、太陽を飴玉のように包み込めるレベルの大きさの紙になります。
そんなサイズの紙を地球上に置くことはムリですし、そもそも紙の材料の木だって(多分)足りないかと。
「紙を折って月に行く」というのはロマンがある話ですが、現実としてはこんなもんでしょう。