「大天使」は意外と低い地位。天使の序列や階級
「天使」というと神聖な存在、あるいは神の使いというのはご存じのはず。
そして「大天使」と聞けば、その天使の上位者と認識している人も多いでしょう。
「偉大な天使」「なんとなくすごい天使」といったイメージの大天使ですが、実はかなり低い地位だったりします。
では、なぜそんな大天使があたかも天使の代表のような表現として使われるのか?
天使とは
まずは天使とはいったい何者なのかのおさらいを。
天使は「キリスト教」「ユダヤ教」「イスラム教」のみに登場する神の使いで、「御使い」と呼ばれることも。
宗教に詳しくないと知らない人もいるでしょうが、この3つの宗教は同じ唯一神「ヤハウェ」を対象にした宗教です。
なぜ同じ神なのに宗教が3つもあるか詳しく書くと脱線するので省略しますが、要は時代・解釈の仕方で内容が変わったのが原因。
あるいは同じ神から、新たな啓示を受けて聖典として編集したからともいえます。
一番古いのがユダヤ教(紀元前500年前後)、次にキリスト教(西暦70年前後)、最後にイスラム教(西暦610年頃)。
奉る神が同じなため、その使いたる天使も同じというわけです。
階級にも寄りますが、天使の主な役割は「神のお告げを伝える伝令役」「神に背くものの処罰」「天国に住まうにふさわしい者の選定」です。
天使が背信者を罰した特に有名な出来事といえば「ソドムとゴモラ」でしょう。
「ソドム」と「ゴモラ」は都市名で、退廃や悪徳に塗れたとし、天使(あるいは神)が硫黄と火を用いて滅ぼしたとされています。
基本的には「神の代弁者」という側面が強く、神に代わって奇跡を起こすこともあります。
イエス・キリストの誕生の際、聖母マリアの元に祝福を届けに来たりもしています。
「大天使」の意味は2つ
一般…主にキリスト教信者で使われる大天使には、実は2つの意味があります。
一つ目は天使の階級としての「大天使」、もう一つは階級が高い天使達を指す「七大天使」というもの。
階級の「大天使」
こちらは「天使」という階級の、ひとつ上の階級という意味での「大天使」。
天使には細かい階級が9つあり、ただの「天使」が最下級なので大天使は下から2番目の地位。
一般での大天使のイメージとしては、かなり肩透かしな感じでしょう。
しかも「天使」の上だからといって何か違いがあるわけでもなく、「天使の中でもひと際威厳を感じる」といった程度の違いしかありません。
実際はこんなに地位が低いのに、なぜ「偉大な天使」という感じで大天使といわれるのか?
その理由が次の「七大天使」になります。
特に重要な「七大天使」
大体「偉大な天使」というイメージで「大天使」と言うと、ほとんどはこの「七大天使」のことを指しています。
七大天使とは、天使達の中でも特に高い階級にいる天使達のことです。
神に直々に仕えていたり、何か重要な役割や能力を持っている天使が該当します。
…ただ各宗派や書物によってはメンバーに違いが出ます。
とりあえずどんな解釈でも共通して七大天使として数えられている天使がこちらの4名。
・ウリエル
・ガブリエル
・ラファエル
他にも「サマエル」「バラキエル」「カマエル」「ザドキエル」「ラミエル」「サリエル」「セラフィエル」「イオフィエル」「イェグディエル」「スリエル」…等々。
ただ赤字の名前の天使は堕天した天使だったりと、各見解によってはかなりのバラつきがあります。
まあ堕天する前はかなり重要な役割を持っていた天使だったりと、「偉大な天使」だったという点では納得のメンバーですが。
他にも「トビト記」や「ヨハネの黙示録」といった数多くの書物では、書物内のテーマで特に重要な天使達を〇大天使と数えています。
こうしたことから「大天使=かなり偉い天使」というイメージが定着したと思われます。
天使の階級
大天使は下から2番目と書きましたが、他にはどんな階級があるのか?
天使の位階(ヒエラルキー)は3種類、かつそれぞれに3つの種別があり、計9つの階級があります。
位階としては高い順に「父」「子」「聖霊」。
聖句の「父と子と聖霊の御名において」というのはこれ。
各位階を高い順に並べるとこうなります。
位階 | 種別名 | 主な役割 |
---|---|---|
父 | 熾天使(セラフ・セラフィム) | 神の直属の部下 |
智天使(ケルビム) | 重要な場所の守護 | |
座天使(王座) | 神の戦車の運び手 | |
子 | 主天使(主権) | 下界に神の威光を伝える |
力天使(力) | 奇跡を授ける | |
能天使(能力) | 布教活動 | |
聖霊 | 権天使(権勢) | 特定の人や国家の守護 |
大天使 | 「天使」の中で強そうな天使 | |
天使 | 一般天使 |
「聖霊」とすごそうな階級である「大天使」はこの通り下から2番目、二つ名すらありません。
最下級の「天使」の中でも、特に偉大そうな(目立つ)天使につけられる階級…というか、名称の方が適切かもしれません。
「七大天使」に代表される有名な天使の「ミカエル」「ウリエル」「ガブリエル」などは、ほとんど「父」の階級の天使です。
漫画や映画で出てくる大抵のネームド天使は「父」の「熾天使」の天使が多く、それより下の位階の天使の名称すらはっきりしないことも。
名前がはっきりしているのは「熾天使」の天使くらいなもので、「ミカエル」「ラファエル」「ウリエル」「ガブリエル」、のちに堕天した「ルシファー」などがいます。
「子」以下の階級からはほとんど名称が出てこないです。
一般的な「大天使」とは
先ほどの階級でも書いた通り、正規の「大天使」という意味では下から2番目とかなり低い階級となります。
…まあ一番下の「天使」にただ「大」とつけただけなので、かなり安直なネーミングで特徴もないですが…。
特徴もネーミングに沿ったもので、「(最下級の)天使の中でも特徴的な・威厳を感じる天使」という意味合いが強いです。
実際役割自体も「天使」と変わりが無いらしく、本当に見た目だけで判別されているそうです。
これからは「大天使」と聞いたら、ミカエル達を代表とした「七大天使」のことだと思うようにしましょう。