宇宙に空いた穴「ブラックホール」の特性・作られる仕組みなどの豆知識

その他・雑学その他

SFなどでよく登場する「ブラックホール」。

「とりあえずヤバいもの」という認識は持っていると思います。

「強力な重力」「なんでも吸い込む穴」「別世界の入り口」…。

様々な科学的な意見・ロマンがある解釈がされています。

しかし、その詳しい特性やどうやってつくられるのかなどは知らない人もいると思います。

ブラックホールの材料・仕組み・大きさといった、ブラックホールにまつわるアレコレをまとめてみました。

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ブラックホールとは

まずはブラックホールについて、ある程度科学的に説明されている部分から解説していきます。

元々は「太陽」

ブラックホールの原材料は恒星…「太陽」です。

つくられるというよりも恒星(太陽)が寿命を迎える(死ぬ)とブラックホールに変貌するという方が正しいです。

恒星が寿命を迎えて死ぬことを「超新星爆発」といいます。

これがブラックホールの誕生のきっかけです。

夜空に瞬いている星のすべては宇宙に点在する恒星の光です。

そのことから遥か遠い将来にはあれらがブラックホールになる可能性を秘めているということ。

しかしどんな恒星でもブラックホールになるかというと、そういう訳ではありません。

例えば私たちが常日頃から見ている「太陽系」の太陽はブラックホールにはなれない、とのこと。

ブラックホールになるには恒星が持つ質量(大きさ)が重要です。

その基準ですが、太陽の8倍以上の大きさの恒星でないとブラックホールにはなりません。

それ以下の質量しか持たない恒星はブラックホールにならずに寿命を終えるそうです。

太陽がどう変化していくか

できたての太陽というのは大量のガスといったものの集まりです。

それに引火することであんなにも燃え盛っています。

太陽の温度は一番低い黒点部分でも4000℃、表面の平均は6000℃、一番熱い核の部分だと1500万度という超高温になっています。

そして太陽の持つ熱量の大半は「核融合」によって維持されています。

核融合とは現在の原発で利用される「核分裂」のように、物質を構成している原子を利用した反応のことです。

原子(物質)は「陽子」「中性子」「電子」の3つによって構成されています。

核融合はこれらを元の物質から分離させて衝突、つまり無理やり再結合させることによって起きます。

こうして衝突して結合した際に膨大なエネルギーを発します。

しかし陽子などは既存の何かの物質を一度分解しないと作れません。

この分解のために超高温が必要になります。

①太陽の1000万℃以上の超高温によって原子を分解

②再結合

③再結合時のエネルギー(熱)で原子を分解

④再結合

以下③からループ

このサイクルを繰り返して熱を生み出し、その生み出した熱すらも核融合に利用しているといった状態です。

原則核融合の熱で再度核融合ができるため、最初の超高温さえあれば核融合を起こし続けられます

問題は核融合で物質の再結合を繰り返すと、前より重い物質に変化していくという点です。

太陽などの恒星は核融合に必要な温度が低い(核融合が起こりやすい)水素が元になっています。

しかし水素が分解(核融合)されて再結合すると、今度は少し重いヘリウムに変化します。

そのヘリウムの次はリチウム、といった具合にどんどん太陽の内部が重くなっていきます

最終的には鉄といった重い物質に変わっていくと核融合が行われなくなります。

こうなるとエネルギー(光・熱)などがつくれなくなり、その時点で太陽は恒星としての寿命を終えます。

しかし最後に鉄といった重金属のかたまりとなるため、これが超重力のブラックホール発生の原因になっています。

ブラックホールの始まり

ブラックホールは核融合を終え、重金属のかたまりとなった恒星が元で発生します。

重量(重力)といったものはどんな物質にも存在しますが、その物質の重さ(質量)や密度によっても強弱が生まれてきます。

惑星単位といったデカいサイズでで考えると分かりやすいです。

月や火星といった小さい惑星は重力が弱く、木星といった大きな惑星は重力が強いです。

しかし惑星全体が重金属でできていると例え地球と同じサイズだとしても重力の強さはケタ違いになります。

ブラックホールになる恒星は太陽の8倍以上の大きさが必要です。

そのため地球が豆粒どころか微生物クラスに思えるような巨大な金属のかたまりになります。

こうなると想像だにできない重力になります。

この重力が一定の強さを超えるとその惑星自体が自分の重力によって押しつぶされていきます

自重で押しつぶされる

密度が高くなり、重力が増す

また自重で押しつぶされる

更に密度が高くなり、重力が増す

ループ

押しつぶされる=密度が高くなるのループによって、どんどん重力が強くなっていきます。

強くなった重力は次第に惑星の周囲のものを引き寄せ始めます。

これがブラックホールの始まりです。

重力のかたまり

ブラックホールはあらゆるものを引き寄せる強力な重力のかたまりです。

どのくらいの強さかというと、現在確認されている限りではブラックホールに吸い込まれたら逃れられる物質は存在しないとのこと。

「光」という物体ともいえなさそうなものまで引き寄せて、決して逃がさないほどの重力を持ちます。

「光を吸い込む」といわれてもイマイチわからないでしょう。

そんなときは光の速度で考えるとその凄さがわかります。

光の速さは「光速」と表され、その速度は299,792,458 m/sと秒速約30万キロメートル

時速換算だと時速10億800万キロメートルというとてつもない速度になります。

「1秒間に地球を7周半できる」と比喩されることもあります。

月まで到達するのにも2秒しかかかりません。

スペースシャトル(最高時速約3万キロ)だと最短でも2日かかると思えば、その速度もそれなりにわかるのではないかと。

ブラックホールは例え時速10憶キロの速度を出せるロケットでも逃げられずに吸い込まれてしまいます。

「吸引速度が時速10憶キロを超える掃除機」みたいなものです。

そのため現状ではスペースシャトルはもちろんのこと、宇宙で確認されている速度に関わるもの全てがブラックホールの重力からは逃げられないとされています。

吸い込まれたらどうなる?

「ブラックホールに吸い込まれたらどうなるか?」という問い。

「のしいかみたいに平たく潰される」「極小の粒状に押し潰される」なんて想像もするでしょう

しかし実際には大きく異なるそうです。

例えばAというものがブラックホールに吸い込まれたとします。

この場合なんと「燃え尽きるA」と「そのままブラックホールの底に落ちていくA」の2つが存在する、という考えがあります。

ブラックホールに吸い込まれる物体がどうなるかは「量子力学」と「一般相対性理論」の2つの理論を用いて推測されます。

量子力学…物質を構成する原子・分子・電子といった極微小なものに関わる理論。パソコンの半導体やレーザーといったものにも使われる。
一般相対性理論…時間や空間に関わる理論。日常ではGPSや時間の齟齬の解消に使われている。

「量子力学」と「一般相対性理論」は現代を支える重要な理論です。

パソコンのCPUといった日常でも使われる理論で、それでいて問題なく作用しているため間違っていることは考えられていません。

むしろ間違っていたら世界基盤が崩壊するといっても過言ではないレベル。

ファンタジーの魔法なんかはこれらの理論上「どうしてそうなるのか」がわからないため非科学的といわれる原因になってます。

つまり現実に存在するブラックホールの観測においても、この2つの理論をもとに推測されています。

まず「量子力学」の観点から。

まずブラックホールの表面は大量の熱を発生させているため、視覚的にはここでAは燃え尽きてしまいます。

しかし次のアインシュタインが提唱した「一般性相対性理論」が問題。

この理論上では、Aは燃え尽きずにそのままブラックホールの中に吸い込まれていくという結果が出るそうです。

つまり現代を支える重要な・間違っていてはいけない理論が2つの矛盾した結果を指し示していることになります。

これを「ブラックホール情報パラドックス」と呼びます。

これらの理論から仮にブラックホールに人が吸い込まれた場合。

客観的に見れば吸い込まれた時点で燃えつきていますが、主観的に見ればまだ吸い込まれ続けているという結論に。

「理論が間違っていてはならない」という強迫観念から生まれた結論ともいえるかもしれません。

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事象の地平線

ブラックホールの重力に関するもので有名なのが「事象の地平線」「事象の地平面」。

あるいは「シュバルツシルト面」という呼称があります。

これは簡単にいってしまうと「これ以上近づいたら重力から逃れられない境界線」や「これ以上観測することができない領域」という意味になります。

いくらブラックホールが超重力のかたまりとはいえ、距離に関係なく何でも吸い込むことはできません。

それなら今頃は宇宙中のあらゆるものが吸い込まれているでしょうし。

そのため物質がブラックホールから帰ってこれる可能性の限界ラインがこの事象の地平線といえます。

ただし、これは光の速度で脱出することが最低ライン。

なので大抵のものは吸い込まれて終わりです。

そのため光以上の速度を持たないものがこの事象の地平線に触れてしまうアウト。

ブラックホールの重力から逃れることができずにそのまま吸い込まれてしまいます。

光が帰ってこれないため反射などの情報すらも得られません。

そのため「これ以上観測することができない場所」にもなっています。

精々が「光すら帰れない場所」といった情報しか得られません。

ちなみにこの事象の地平線はブラックホールだけが持っているものではありません。

地球といった惑星から石ころにも一応は存在しています

重力というものはその引き寄せる力以上の速度で逆方向に進む…例えばスペースシャトルで宇宙に向かって重力を振り切るように進めばいずれ重力圏内から脱出できます。

これはその惑星の外側になればなるほど、振り切るための力は少なくなります。

地球のように回転している惑星だと回転する力が加わる(重力が低い)ため、さらに脱出は容易になります。

赤道付近に近づくようにシャトル発射場がつくられるのはこれが理由。

日本なら利便性を含めて九州南端にある種子島に発射場があります。

しかし逆をいえば惑星(物質)の重力の中心となる核に近づけば近づくほど重力は大きくなります

つまり理論上ではいずれ脱出できないような重力が発生している領域があるということ。

ただしこの領域はブラックホールに比べると極々微小なもの。

例えば地球の事象の地平線の距離は地球の完全な中心点から9ミリメートルほどとかなり短いです。

しかしブラックホールの事象の地平線はその中心点から惑星の大きさ以上の距離。

一度吸い込まれると逃れるのが至難になっていきます。

ブラックホール内部の特異性

ここからはブラックホールの内部はどんな状態になっているかという仮説です。

しかしブラックホールの中に入って戻ってきたものは人はいません。(公式上は…)

かなり推測の部分が多くなりますが、現状では「こうなっているだろう」という説をいくつか紹介します。

特異点

ブラックホールの中は既存の物理学といった常識が通用しません

これを「特異点(シンギュラーポイント)」といいます。

特異点はブラックホール内部の「重力が無限大になる場所」に発生しています。

おおむねブラックホールの中心点あたりにあると推測されてます。

そして特異点では時間・空間・物理法則が完全に破綻しており、通常ではありえない事象が多発するそうです。

例えばサイコロを10回振ったら、10回1の目が出るとか。

あるいは「光を掴む」なんてことも可能かもしれません。

とあるロボット作品においては「偶然が多発する」といった表現もされています。(宝くじ当たり放題?)

いってしまえばブラックホールの中は何でもアリな状態になっているといえます。

ただし何でもアリとってもこれはブラックホールの内部だけの話。

なので、現状ではブラックホールの外まで影響は及びません。

しかし何かの拍子にこの特異点がブラックホールの外に出てしまうと話は別。

影響は宇宙中に広がっていき、宇宙自体の法則自体が崩れ去ってしまう可能性が出てきます。

この外に出た状態の特異点を「裸の特異点」といいます。

SFなんかで出てくるブラックホールで「そんなこと起きるの?」なんて現象は、この理論が原因になってます。

ブラックホールのまわりでは時間が遅くなる

ブラックホールに近づきすぎると進む時間に齟齬が出始めます

時間というものは重力の影響を受けるらしく、重力が少ないない場所の方が早く時間が進みます

これはブラックホールだけに限らず、重力が働く場所や有無によっては地球圏内ですらも発生しています

例えば地球上では地表付近と宇宙空間とでは、100億分の7秒の時間の差があるそうです。

誤差としては約69万4,444日で7秒ほど。

まあこの程度なら完全に誤差といえるレベルです。

しかしブラックホールほどの超重力ともなるとこの程度では済みません。

おまけに事象の地平線という光すら逃げられないほどの重力にもなると、とんでもない時間の齟齬が出始めます。

ブラックホールの中で1日過ごしたら外では数年経過していた、なんて事態もあるわけです。

「ウラシマ効果」というのを聞いたことがある人はいるでしょうか?

これはおとぎ話「浦島太郎」の話の内容と類似しているからです。

…まあ非公式の呼び名ですが。

異世界への入り口?

「何でもアリなら、異世界の入り口だってあるだろう」。

完全な憶測による理論ですが、こんな考え方もあります。

異世界の有無の証明は置いておいて、そこら辺に別の世界に通じる入り口があるわけありません。

しかし特異点付近ではその常識そのものが通じません

そのため「特異点の中なら可能性としてあるのではないか?」となるわけです。

まあブラックホールに吸い込まれて帰ってきた人なんて確認されていません。

そもそも吸い込まれた時点で生きていられるかも、ブラックホールから抜け出せるとも思えません。

最低限「ブラックホールに出入りできる」というものができるまでは確認できないでしょう。

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ブラックホールの寿命

ブラックホールにも寿命があります。

自分の持つ重力が維持できなくなるくらい質量が減ると消滅すると考えられています。

ブラックホールに吸い込まれた物質は基本戻ってくることはできません。

が、量子という極微小な物質なら出ることが可能といわれています。

ブラックホールの表面では発する重力によって「粒子」と「反粒子」というものができます。

この2つは互いに衝突すると「対消滅」という、とてつもないエネルギーを発します。

この対消滅の際に発したエネルギーによって極微小な粒子がブラックホールの外に弾き飛ばされます。

つまり弾き飛ばされた分の粒子の質量が徐々にブラックホール内から失われていくわけです。

そのためブラックホールを維持するためのエネルギー源が無くなり、最終的には爆発して消え去ると考えられています。

…まあ何億年レベルでの話ですが…。

ちなみにこの対消滅が起きるとエネルギーによる発光があるため、その付近が明るくなります。

この現象はブラックホールが大きい(重力が強い)ほど活発になります。

そのため大きいブラックホールだとブラックホールの表面が光って見えるそうです。

※ホワイトホールは存在しない?

「何でも吸い込む」ブラックホール。

その対になる存在として「何でも吐き出す」ホワイトホールのことを聞いた人もいるかと。

しかしホワイトホールはまだ理論上の存在です。

・観測された事例が無い
・物質を吸い込まず、吐き出すだけ(物質を生み出している)
・数式上では「負」の存在

まず「吐き出す」ためにはどこかで吐き出すものを調達しないといけません。

しかし、ホワイトホールのようにそれをせずに物質を吐き出し続けることはできません

「ブラックホールで吸い込まれたものが吐き出されている」と考える人もいます。

しかしブラックホールの内部の観測に成功したことはありません。

そのため吸い込まれたものがどうなるのかの証明はできず、ホワイトホールに繋がっている確証には至りません。

ホワイトホールの存在は「アインシュタイン法則」というものの解で出たものです。

しかし計算上ではホワイトホールは「負(マイナス)」の存在となっています。

例えばブラックホールが直径10cmのリンゴだとしましょう。

そうなるとホワイトホールというのは直径マイナス10cmのリンゴという現実には存在しないものを指しています。

中には「自分の持っている質量を放出し続けたために自然消滅している」という説もあります。

しかし、これも実際に観測できていないので推測の域を出ません。

こうしたことから現状ではホワイトホールの存在はいまだ「理論上は存在する」という状態に留まっています。

まとめ

ブラックホールについて明確に分かっているのは以下のものだけです。

・誕生の仕組み
・光すら逃さない強い重力
・内部の観測は現状不可能

あとは数式やら理論やらで計算・推測した結果が一人歩きしている状態。

確定的といえるものはほとんどありません。

おまけに計算上のこととはいえ「特異点」なんていう何でもアリなものがあるせいで、余計に訳が分からない状態になってます。

仮にワープ技術が発明されたとしても、重力で空間すら歪んでるのでワープできるかも不明と完全にお手上げです。

これらを「ロマン」と見るか「理解不能な災害」と見るか…。

後世にブラックホールと直面したときにならないとわからないのでしょう。

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