ガスと電気、出す二酸化炭素量はどのくらい違う?
「二酸化炭素の排出を考えるなら、ガスよりも電気」というのは良く言われます。
実際、電熱を使うIHヒーターなら二酸化炭素は出ません。
ただしこれは一般家庭レベルと極狭い範囲での話。
「火力発電」という発電形式がある以上、大本では二酸化炭素は発生しています。
では電気とガスで1リットルの水を沸騰させる場合、どの程度の二酸化炭素の量に違いが出るのか調べてみました。
ガスコンロでの二酸化炭素量
まずガスコンロで1リットルの水を沸騰させる場合。
ガスによる二酸化炭素の排出量は次のやり方で計算できるそうです。
※m3=立法メートル
この場合のキログラム/立法メートルというのは、1メートル四方の空間に何キロ分の気体があるか、ということ。
例えば1キログラム/m3なら、1メートル四方の空間に1キログラム分の二酸化炭素がある、という表現になります。
二酸化炭素係数というのは、そのガスを燃やすことでどの程度の二酸化炭素が発生するかの指標になります。
これはガスの種類(各ガス会社)によって若干の違いが出ます。
例えば、都市ガスのシェアの大半を占めている「東京ガス」大阪ガス」「東邦ガス」の3社。
東京ガスの提供するガスの二酸化炭素係数は「2.21kg/m3」、大阪ガスや東邦ガスなら「2.29kg/m3」。
概ね2.30キログラム/立法メートルくらいの数値に収まります。
後はこれを実際に使用したガスの量に乗算するだけ。
そして1リットルの水をガスコンロで沸かすには約10分くらいかかります。
中火くらいだと、10分で消費されるガスの量は約0.005m3程とのこと。
つまり、ガスコンロで1リットルのお湯を沸かす際の二酸化炭素量はこうなります。
つまり0.0115キログラム(11.5グラム)の二酸化炭素が発生する計算になります。
実際は都市ガス・プロパンガスではガスの使用量などが異なってきますが、概ねこのくらいかと。
電気での二酸化炭素量
次は電気で1リットルのお湯を沸かした場合。
「電気なら二酸化炭素は出ないんじゃ?」と思う人もいるでしょうが、その電気を作る過程で二酸化炭素が出る場合があります。
それが「火力発電」。
現在の日本に置いて発電量全体の7割以上が火力発電になります。
つまりオール電化だとしても、使っている電気の7割以上は何かを燃やして作っていることになります。
全く二酸化炭素を出さない発電方法は「原子力」「水力」「風力」「ソーラー」「地熱」の5つ。
この5つを合わせても発電割合は全体の3割以下。
どれほど火力発電に依存しているかが分かると思います。
ちなみに福島原発の事故以降に原子力発電は下降の一途を辿り、今では全体の5パーセント未満。
水力発電や太陽光発電よりも下と考えるとその発電量の少なさが分かるかと。
少し逸れましたが、では本題。
以上のことを踏まえると、実際に電気を使った際の二酸化炭素量はどうなるのか?
計算方法は少々面倒です。
電気での二酸化炭素の排出量は、使った電力の内の二酸化炭素を出す火力発電での電量で求めます。
要は使った電力を作るのにどのくらい火力発電での電気を使っているか、ということ。
例えば、1リットルの水を電気ケトルやIHで沸騰させようと思うと5分前後はかかります。
この時間に使っている電気を発電する際に出る二酸化炭素量を計算します。
火力発電では「石油」「石炭」「LNG(液化天然ガス)」の3つを燃やして発電しています。
…が、どれも発電する際の二酸化炭素の排出量はさほど変わらず、1キロワットの発電で約1グラムの二酸化炭素を排出しています。
実際の計算結果はこちら。
電気ケトルの消費電力は1300ワット毎時(1.3キロワット毎時)前後なので、5分間だと約108ワットの消費電力になります。
この100ワットの内の7割が火力発電(二酸化炭素を排出)となり、火力発電で賄っている電力は約76ワット。
1キロワットの発電で1グラムの二酸化炭素量なので、電気ケトルで1リットルのお湯を沸かすとなると約0.076グラムの二酸化炭素を出す計算になります。
比較結果
結論として、ガスコンロ・電気で1リットルの水を沸かす際の二酸化炭素はこうなります。
二酸化炭素量 | |
---|---|
ガスコンロ | 11.5 g |
電気 | 0.076 g |
ガスコンロでは電気での151倍もの二酸化炭素を排出しているという結果に。
ヤカンなどの熱伝導率によってはもう少し早く沸きますが、5分で沸くとしても電気の70倍以上の二酸化炭素量になります。
この結果なら「ガスより電気」と言われるのも納得でしょう。
時間も電気の方が早いですし、電気で済むならそちらの方が良いかと。
ちなみに料金ですが、1m3のガス代は約600円(従量単価)、1kwhは約18円程となります。
つまり今回の計算では、ガスコンロだと3円、電気では1.5円となり、こちらでも電気の方がコストは低いです。
二酸化炭素にしろ料金にしろ、どちらでも良いというなら電気の方がお得という結果になりました。