冷却マットは効果が無い? マットが熱くなる原因・冷えやすくする条件
真夏の冷房の電気代を浮かせるための便利グッズの「冷却ジェルマット」と呼ばれるもの。
マットの中に吸熱性のある素材を入れて体を冷やす仕組みですが「全然冷たくない」「暑いと全く効果が無い」なんてケースもあります。
ではなぜそんなことが起きるのか?
冷却ジェルマットが体を冷やす仕組みと、その効果を十全に引き出す方法を紹介します。
マットが冷たい仕組み
販売されている「冷却ジェルマット」では吸熱性の高い素材を使って、身体の熱を吸収して冷やす仕組みが大多数です。
この吸熱性のある物質には文面通りジェルが使われています。
ジェルの素材は主にポリマーや塩化化合物が使われています。
ポリマー製ジェル
ポリマーはポリエチレンといった素材から作られ、「重合体」という特性を持ちます。
「重合体」とは、「単量体(分子)」という小さなかたまりがギッチリ詰まった物体のことを指します。
この小さな物質同士の隙間に毛細管現象によって水分が吸収されるため、高い保水性を持つことができます。
ポリマー製ジェルは保水量が吸熱性能を決めるといっても過言ではないので、ポリマー製ジェルマットは大量のジェルを使用していることが多いです。
ただ大量のジェルをマットに入れても、型ズレやジェルが体重で偏ってしまうため、後述の「塩化化合物製ジェル」と併用していることも。
塩化化合物ジェル
塩化か化合物ジェルの特性として、30℃を境に液化・結晶化を繰り返して吸熱するというものがあります。
塩化化合物、というと有害なイメージを持つ人もいるかもしれませんが、ジェルで使われている塩化化合物は「塩」です。
塩の化学名は「塩化ナトリウム」で、塩素とナトリウムが安定した状態で固形化したもの。
ジェルでは「硫酸ナトリウム」という「硫酸」と「ナトリウム」からできる塩が使われることもあります。
こちらは温泉や入浴剤などにも含まれており、人体に悪影響はないとされています。
塩化化合物は30℃を超えると液化し、その際に吸熱して体の熱を吸収します。
そして30℃より低くなると蓄えていた熱を放出し、再度結晶化。
この結晶化→液化→結晶化のサイクルを繰り返すことで、延々と吸熱し続けることができます。
もうひとつの特性として、塩化化合物もポリマーのように多くの分子を内包できる「高分子」という特性を持つため、同じく保水性が高いです。
塩化化合物である塩の特性で分かる通り、保水性が高いかつ人体に無害なため使い勝手が良いです。
これらの特性のおかげで少量でも冷感性を持たせることができるため、ジェルの素材としてはこちらがメジャーなものとなっています。
ジェルが冷たく無くなる原因
ジェルの欠点として一定以上の温度になると吸熱性が失われる、という点。
これは体温でもそうですが、室温にも左右されます。
大体室温が33℃以上になるとジェルが熱を持ってしまい、冷感性が無くなり始めます。
ポリマー製ジェルの場合
ポリマー性のジェルだと水分のみで吸熱しているため、室温に比例して熱を持ちやすい欠点があります。
単純に水分が熱を溜めこんでしまっている状態です。
そのためより多く吸熱できるよう、ポリマー性のジェルマットではかなり多くの量のジェルが使われることが多いですが、それが欠点を助長する形にもなります。
ジェルの量が多ければ吸熱した熱量も多くなるため、時間を置いても冷感性が戻ってきにくくなっています。
塩化化合物ジェルの場合
塩化化合物のジェルだと室温が30℃以上になると吸熱性がかなり低くなります。
塩化化合物が吸熱をするのは結晶が液化する時のみ。
つまり再度冷感性を持たせたいなら、もう一度結晶化させる必要性があります。
液化から再度結晶化するには30℃より低い温度でなければならないのですが、室温が高すぎると結晶化ができなくなります。
塩化化合物は結晶化する際に熱を放出するため、液化している状態ではポリマー製ジェル同様に熱を溜めこんだ状態になっています。
しかし室温が30℃以上になってしまうと結晶化ができなくなるため、冷感性が著しく落ちます。
そして液化した状態のジェルはそのまま熱を溜めこんでいきます。
そのため室温が33℃を超えてくると温熱マットといっても差し支えない状態へと変貌します。
「冷感」を維持するには
冷房などの電気代を減らすために冷感マットを買ったのに、暑すぎると使い物にならないという矛盾。
では冷感ジェルマットを冷たいまま使い続けることはできないのか?
ある程度ですが、一応効果がある使い方はあります。
それが「マットと床の間に隙間を作る」こと。
・竹シーツ
・すのこマット
これらの寝具をジェルマットの下に敷いて使えば、ある程度は熱を放出して、ジェルの冷感が戻ってきやすくなります。
メッシュマットレス
メッシュ状の構造にしたマットレスを使えば空気の巡りが良くなり、放熱性も高くなります。
寝相に適した形に変形してくれるので、寝苦しさもありません。
厚さ数センチほどの薄いマットレスもあるので扱いやすく。すぐに使用可能です。
…まあ厚ければ厚いほど通気性も良くなるので、そこら辺は使い勝手か、機能性かを選ぶことになるかと。
竹シーツ
竹シーツ シングル 100×150cm 【天然素材「竹」を使った接触冷感寝具!】 竹ドミノシーツ 孟宗竹100% バンブーシーツ マット シート 敷きパッド 天然素材 ドミノシーツ 竹寝具 夏 涼感 冷感 暑さ対策グッズ ひんやり 竹マット
竹シーツは冷感グッズとしても販売されている製品です。
冷感のある竹を小さくカットして繋ぎ合わせシーツ状にしたもので、身体に合わせてある程度変形もしてくれます。
ジェルマットと違って竹は熱を溜めこみにくい性質となっています。
竹の表面はツルツルして肌に密着し、熱を吸収。
しかし竹内部は穴だらけで空気を含んでいるため、吸収した熱をすぐに放熱していきます。
ジェルマットと違って柔らかさこそないものの、室温の上昇に影響を受けにくい冷感グッズとなっています。
これを使えば、竹シーツがマットの熱を吸熱してくれますし、隙間もあるので放熱性も少しはあります。
すのこマット
すのこマットを使えば床との間に大きなスペースを作れるので、下からも放熱しやすくしてくれます。
扇風機や冷風機で風を送り込めば、さらに放熱の効率が上がります。
折り畳み式で収納性の良いすのこマットが主流なので、丸めて置けるので片付けもラクです。
…ただ、すのこマットは他に比べある程度安いですが、少々固くて寝にくい人もいるかと。
他の寝具のついでに使うのがベスト。
Q-max値は関係ある?
冷感グッズで見かけるようになった「Q-max値」という単語。
「Q-max値0.5以上で冷たさ抜群!」なんて、冷たさの宣伝文句として使われていますが、イマイチ分かってない人もいるでしょう。
簡単に言えばこれは「どれくらい早く熱を吸収できるか」という数値です。
数値が高いほど体がマットに触れた瞬間に吸熱してくれるので、より冷たさを感じるようになります。
最低でも0.2以上ないと冷感グッズとは認められないため、数値が高いほど吸熱性が高いことになります。
ただし勘違いしやすいのがQ-max値が高いほど冷たさが長続きするわけではない、という点。
Q-max値が示すのはあくまで「吸熱速度」であって、数値が高いからと言ってずっと冷たいままなわけではありません。
むしろ吸熱力が高い(早い)分、ジェルが温まるのも早くなります。
Q-max値が高いだけでジェルマット含めた冷感グッズを選ぶのは早計といえます。
どう熱を逃がすかがポイント
残念ながら、ジェルマット単品では熱帯夜に対応できません。
先程のQ-max値を高くするようにしても結局は熱を溜めこんでしまうので、普通のベッドマットに敷いて使っても意味がありません。
ジェルマットの冷感を維持するには、どうにかして放熱するしかありません。
そのための方法が、今回紹介した冷感グッズ。
ひとしきり揃えると2万円ほどはかかりますが、数年単位で使えば元は取れます。
冷房の電気代は設定温度や消費電力にもよりますが、1時間30円~50円ほど。
熱帯夜で1日4時間使うとすると、冷房シーズンで1万円ほどの電気代がかかる計算になります。
「冷房を使うほどじゃないけど、それなりに暑い」なんて時には役に立ちます。
冷房を使わず、少しでも涼しい生活にしたいなら、試してみてください。