繁忙期の定義。労働基準法・36協定で残業の「繁忙期の場合は~」の条件とは?
36協定において「残業は月45時間以内、年360時間以内にする」と書かれています。
しかし「ただし繁忙期には~」という例外措置もあります。
この「繁忙期」とは、どういった場合のことを指すのか?
場合によっては繁忙期が無い職種なのに「繁忙期だから残業」なんていわれることも。
しっかり繁忙期の意味を理解して自分がどんな環境にいるか理解しましょう。
繁忙期とは
一般的な定義として繁忙期とは「1年のうち特定の時期のみ忙しくなる」場合のことを指します。
業務内容としての繁忙期の具体的な定義としては「注文が増える」「仕事量が増える」ことです。
これは業種によってかなり時期に違いが出てきます。
旅館・ホテルなどの宿泊業やレジャー関係、飲食関係はGWや夏休みといった大型連休が。
農業関係なら(作物や果物の種類によりますが)作物が育ちやすくなる春先以降が。
書籍・家具関係なら学校の新入生・新社会人といった人が増える4月前に用意しないといけないので、大体11月くらいから忙しくなります。
大抵は時期を乗り越えれば忙しさも落ち着く傾向にあるため、こうした時期がその業種における繁忙期になります。
繁忙期がない業種もある
一方で繁忙期というものがない業種もあります。
例えば精密機械や車といったものは年中必要とされているので、一年間を通して一定のペースでつくられています。
そのため「特定の期間だけ量が増える」といったことが少なく、繁忙期という期間は存在しません。
こうした業種は年中商品を作り続けるため、工場関係だと祝日も出勤して仕事をしていることが多いです。
その代わり仕事量がどんな時期も一定なことが多く、(突発的な事情は抜きにして)毎日の業務内容の変化も少なく済んだりします。
祝日がない分残業が少なく、週休も安定してとれるのが繁忙期のない会社となります。
残業時間の決まり
では繁忙期と残業時間の関係について書いていきます。
36協定で決められている残業時間の規定は以下の通り。
1.通常の残業時間
全ての業種に対して、原則として残業時間は「(1)月45時間以内 (2)総合で年360時間」と定められています。
しかしそれだと 月45時間 × 12か月 = 540時間 となるため「総合で360時間」に違反します。
そのため実質1月あたりの残業時間は平均30時間以内に抑えないといけません。
これは休日出勤の時間も含まれるので、そのあたりも注意して計算します。
2.繁忙期の残業時間
繁忙期がある業種の場合は少々面倒で「繁忙期に限り (1)月100時間未満 (2)1年の内6か月だけ月平均80時間以内 (3)総合で年720時間以内」という点。
こちらも休日出勤の分も含みます。
前述した通り繁忙期というのは、1年の内特定の時期のみ発生するのでこうなっています。
つまり仮に6か月間フルに残業させたとして
月80時間 × 6か月 = 480時間
残りの6か月間は1の「毎月45時間以内」に合わせる必要があるため
月45時間 × 6か月 = 270時間
合計で
480時間 + 270時間 = 750時間
しかしこれだと「月720時間以内に収める」の部分に違反するため、どこかの月で残業を減らして帳尻合わせをしないといけません。
また「月平均なため」どこかの数か月での平均が80時間を超えてもアウトです。
もっと詳しくすると「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」のどれかです。
そのため
・45時間オーバーの月が7か月以上ある
・月100時間オーバー
このような場合には規約違反となり、会社に罰則があります。
繁忙期がない業種は残業できない
上記のことから期間限定とはいえ「月80時間残業はOK」と思われるかもしれません。
しかし繁忙期がない業種はこんなに残業させることはできません。
そもそも「予見できない」「一時的なもの」ような事情でもない限り、このような残業時間設定をすることはできませんし、認められません。
前提としては「月45時間以内、年360時間以内」のほうを優先して守る必要があります。
わかっているのに「やむを得ない」「しかたない」なんて曖昧な対応で、長期間大量の残業を強いるような会社は悪質と見なされます。
自分の会社はどのタイプ?
以上が業務における繁忙期の定義と、残業時間との関わりについての解説になります。
業務における繁忙期はただ「忙しい時期」なんて曖昧な意味ではなく、きちんとした定義づけがされています。
あまりにも残業が多く感じるなら、こういった部分に抵触していないか今一度確かめてみましょう。