【バイオハザード】アンブレラ社の繁栄と凋落…どうしてあんな大惨事になったのか
カプコン発の人気ゲームバイオハザード。
第一作が1996年に発売され、昨今ではリメイクも多数開発・販売されているため、シリーズとしては30年近い長寿ゲームにもなってます。
そんなバイオハザード初期に登場する、諸悪の根源アンブレラ社。
今回はそんなアンブレラ社がどうやって設立され、繁栄し、また凋落していったのか。
そんな部分に触れていきます。
アンブレラ創設者
アンブレラを創設したのは以下の3名。
ジェームス・マーカス
エドワード・アシュフォード
ただ、創設者といっても最初から「アンブレラを作ろうぜ!」的なノリで企業したわけではありません。
スペンサー独自の「ある」目的のためのついでといった理由が大きいです。
オズウェル・E・スペンサー
まずアンブレラ設立の最大のきっかけとなった人物は、世界的富豪でもあったオズウェル・E・スペンサーです。
スペンサーはヨーロッパで有数の名門貴族出身で、かつ生化学も収めていた優秀な学者といえます。
彼はある野望を持っていました。
それが「人類全体の進化」と、自分自身がその世界の「神」となること。
そのための手段を探し求めて世界中を探索しています。
そんな中スペンサーはとある書物に「食べると強大な力を得られる」という記述を見つけます。
「それ」を求めてアフリカへ探索に行き、結果「ンディバヤ族」が崇める「始祖花」を発見。
この始祖花に含まれる「始祖ウィルス」こそが、のちの「T-ウィルス」等の原点となります。
始祖ウィルスの発見を起点にしてアンブレラを立ち上げ、表向きは一般向けの製薬会社として発展。
しかし裏では自身の野望や生物兵器の開発の隠れ蓑としています。
性格は冷酷で、機密保持や手段の選ばなさはかなりのもの。
始祖花を崇めるンディバヤ族から始祖花を強奪。
「バイオハザード1」の洋館事件における、洋館の設計者のトレヴァー一家を機密保持のため殺害・人体実験のモルモットにする。
アンブレラが原因でバイオハザードが起きたラクーンシティを、政府との密約で核兵器で抹消する。
核が投下されるまでの間にラクーンシティを「実験場」にし、B.O.Wの性能試験に利用する。
ラクーンシティの生存者達を口封じのために抹殺する。
などなど、明かされているだけでもかなりのもの。
そして権力欲、あるいは臆病な性分もあるのか、自分以外のアンブレラ創設者の2人をも暗殺するほど。
これで自分一人が権力を握ることになるのですが、これがアンブレラ社崩壊のきっかけにもなってます。
ジェームス・マーカス
アンブレラの中でも生物関係のトップといっても変わりないのが、ジェームス・マーカスという人物です。
彼は生粋の生化学者といえ、スペンサーらと共に発見した始祖ウィルスの第一人者となります。
性格は人間不信かつ冷徹で、職員ですら人体実験の材料にする等、目的のためには手段を選ばない一面も。
しかし有能さを見せる者には自ら育成を施すなど、身内と見た者には甘い一面も。
劇中で彼が弟子としていて、かつ有名なのが以下の3名。
バイオハザードの黒幕の一人といえるアルバート・ウェスカー。
G-ウィルス開発者のウィリアム・バーキン。
劇中で姿こそ見せませんが、始祖花が咲くアフリカの研究所の所長にして、バイオハザード7に言及される「コネクション」の創設者のブランドン・ベイリー。
誰も彼もストーリーに置いて重要なポジションを持ち、弟子とするだけあって生化学者としても優秀な部類です。
そして普段のマーカスを表すのが以下の文面。
「規律」は力となり
その力が全ての源となる
マーカスはこのような信念も持っており、アンブレラにおける社員の規範も示しています。
研究者としてのプライドや、ウィルスを扱うという危険性も加味し、徹底した規律を重要視する人物といえるでしょう。
能力も天才といっても過言ではないレベルで、弟子のウィリアムからも羨望や嫉妬を向けられるレベル。
その最たる成果がT-ウィルスの発見とそれを用いたB.O.Wの開発でしょう。
まず始祖ウィルスは遺伝子レベルでの変異を促進できる、「食べれば強大な力を得られる」に違わない効力がありました。
しかし最大の欠点がその致死レベルの毒性。
普通の人間が食べれば即座に死亡するレベルの毒性なため、とても使用できるものではありませんでした。
そこでマーカスは始祖ウィルスの毒性を弱め、より使いやすいウィルスを作り出そうと腐心。
そしてある時、5匹のヒルに始祖ウィルスを投与した結果、その内の1匹がその毒性を克服。
副次的に毒性の弱まったウィルス、「T-ウィルス」を体内に生成しました。
これによりアンブレラは始祖ウィルスからT-ウィルスの研究にシフトし、数々のB.O.W(生物兵器)を作り出すことになります。
そんなアンブレラの躍進に貢献したマーカスですが、研究が進むのと反比例するかのようにスペンサーとの仲が悪化。
先ほども書きましたが、マーカスは人間嫌いな性格ですが、有能な人材を育成することには熱心な一面がありました。
別の意味でとらえると「社内で実力のある研究者はマーカスの弟子・彼寄りの派閥」となります。
このことで社内の権限の低下を恐れたスペンサーは、権力などをエサに彼の弟子のウェスカーとウィリアムに暗殺を提案。
その結果マーカスは目をかけていた弟子に命を奪われるという結末を迎えます。
しかしこれが「バイオハザード0」の事件を引き起こし、かつアンブレラの凋落の一端にもなってしまいます。
エドワード・アシュフォード
アンブレラ創設者の最後の一人が、スペンサーの富豪仲間でもあったエドワード・アシュフォード。
またスペンサー同様に研究者としての一面も持っていた模様。
彼もマーカス同様にすでに故人で、どの作品においてもさほど絡まないため、かなり影が薄い印象があります。
故人となった原因は始祖ウィルスの感染事故。
しかし後にこの感染事故もスペンサーが仕組んだもので、彼を暗殺するためだったと判明。
これによりスペンサーはアンブレラ社の直接的な権力を握ることになります。
作中では彼の息子の「アレクサンダー・アシュフォード」と、孫の「アルフレッド・アシュフォード」と「アレクシア・アシュフォード」が登場。
アンブレラ創設者の一族ということで幹部待遇ではありましたが、貴族としては没落の一途を辿っています。
そんな子孫たちも最終的には死亡し、アシュフォード家は途絶えることに。
このようにアンブレラのスポンサーの一人であったエドワードですが、スペンサーに利用されるだけされて謀殺された印象があります。
…ただ彼もスペンサー達には内密に独自にウィルス研究計画を立てていたりするので、どっちもどっちなのが現実。
同士を排除(暗殺)できるか否かの判断が彼とスペンサーの差だったのでしょう。
アンブレラ設立~繁栄
アンブレラ創設者の3人は紹介しましたが、一足飛びにアンブレラ設立、というわけではありません。
スペンサーを中心としていくつかの過程があり、ようやくアンブレラができています。
マザー・ミランダとの出会い
スペンサーは大学生時代には「神になる」野望をすでに持っていました。
その手段を模索するためにフィールドワークにも出ていたようです。
その過程で「バイオハザード8」の舞台となる、マザー・ミランダが支配する寒村付近で遭難。
しかし遭難中にミランダに発見され、幸運にもミランダの研究の助手として取り立てられます。
スペンサーは生化学者(学生)でもあったので、おそらくミランダの設備や特異菌を見て反応を示し、研究に同調したような態度を取ったのでしょう。
ミランダとしても生物学を知る、自身の研究を忌諱しない人間というのは貴重だったでしょうし。
ここで特異菌という未知の生物での、実践的な研究を経てスペンサーの在り方が形作られています。
しかし研究を手伝うスペンサーは「菌では人体の激的・多様な進化は不可能」という結論を出し、ミランダの元から去っています。
それでも学生当時のスペンサーにとってミランダが師匠のような存在なのは変わらず、年老いても敬意を抱いていました。
これはミランダの研究所の模様をアンブレラのマークとしていることからも伺えます。
またバイオハザード1の舞台の洋館のステンドグラスの一つには魔女を描いたものがあり、これはミランダのことなのでは?という意見もあるそうです。
始祖ウィルスの発見
T-ウィルスの元ともなった始祖ウィルス。
この始祖ウィルスのことは、バイオハザード5に登場する製薬会社「トライセル」の前身の海運会社「トラヴィス商会」のヘンリー・トラヴィスが残した「博物総覧」に記されています。
厳密には「食べると強大な力を得られる」という始祖花のことが書かれており、スペンサーはそれに興味を持った様子です。
そこでスペンサーはエドワード・アシュフォードとジェームス・マーカスと共にアフリカ奥地に探索に出ます。
始祖花はアフリカの古代遺跡の奥地にのみ咲いており、ここで採取できる花からのみ始祖ウィルスが採取できました。
そのためスペンサー達は付近を完全に封鎖するためにアンブレラを設立、現地に研究所を建設し始祖ウィルスの供給源としています。
その過程で始祖花を崇めていたンディバヤ族を完全に締め出し、徹底した情報封鎖をして始祖花を独占状態に。
始祖ウィルスの研究
アンブレラ社を始祖ウィルスの研究の隠れ蓑にしたスペンサー達。
あとは極秘研究所を作り始祖ウィルスの研究に没頭するようになります。
この代表的な研究所が、ラクーンシティ郊外にあったアークレイ研究所です。
始祖ウィルスの研究責任者として、創設者の一人でもあり生物学の天才でもあったジェームス・マーカスを抜擢。
マーカスは研究の末始祖ウィルスを投与したヒルからt-ウィルスを発見。
この始祖ウィルスより扱いやすいt-ウィルスによりB.O.Wの開発が加速。
スペンサーとしてはB.O.Wの販売による利益(研究資金)の確保もそうですが、やはり「より簡単に・確実に人間を進化させる」方法の模索の度合いも多かったかと。
t-ウィルスの開発以降は始祖ウィルスの研究自体は鈍化し、始祖ウィルスを元にしたようなウィルスはほぼありません。
例外はアシュフォード家の才女「アレクシア・アシュフォード」が始祖ウィルスに虫の遺伝子を取り込ませて変異させた「T-ベロニカ」ウィルスがあります。
ただこのウィルスも人体を安全に変異させるためには「数十年単位のコールドスリープ」「内臓移植を繰り返す」などの方法しかないため、扱いづらさはあまり変わっていません。
ラクーンシティの建設と支配
元々は山間部の田舎町だったラクーンシティですが、アンブレラの工場建設によって経済が活性化し大都市へと発展。
しかしそれもアンブレラの計算通りで、アンブレラの権限はラクーンシティの中枢にも伸びていきます。
手始めに住民の好感度稼ぎにアンブレラ社からの出資で市庁舎・大学・病院など、市の中心ともいえる施設を建設。
おまけに警察機構内にもクリス達が所属していた部隊「S.T.A.R.S」を発足。
しかしその裏で秘密研究所を地下深くにも建設したり、大学や病院などでも簡易的ながらもウィルス研究ができる人員や設備を配置しています。
過去にはアンブレラと病院が癒着し、患者で違法な臨床実験などをしていた事件もあります。
…もっともラクーンシティ事件時点では廃病院と化していますが。
こうして街一つを完全に支配下にし地位を盤石のものにしています。
タイラントの完成
t-ウィルスを使用したB.O.Wの研究の結果、最高傑作として完成したのがタイラント。
ただしこのタイラント、作中で多数登場していますが全員ある人物のクローンが素体となっています。
その素体のオリジナルが元ソ連軍の大佐「セルゲイ・ウラジーミル」で、彼はt-ウィルスの完全適応者です。
ご存じの通りt-ウィルスは感染者をゾンビへと変えますが、実は10人に1人の割合でウィルスの抗体を持つ人間がいます。
クリス・レッドフィールドやジル・バレンタイン、レオン・S・ケネディやクレア・レッドフィールド等、バイオハザードの歴代主人公たちが当てはまります。
そして1000万人に1人の割合でt-ウィルスの強化能力を自在に操れる人間が存在します。
t-ウィルスはゾンビ化を除けば身体能力を向上させたり、タイラントのように強化形態に変異することも可能で、それを自分の意思で完全に制御できるのが完全適応者。
映画版バイオハザードなら主人公のアリスが該当します。(…まあ彼女のような超能力は使えませんが…)
セルゲイはそのタイラントの貴重な検体提供者であり、かつ大佐という高い地位にいたこともあり、アンブレラでは上位幹部についています。
セルゲイのアンブレラへの所属とタイラントの量産体制の確立、このあたりがアンブレラの最盛期といえるでしょう。
アンブレラ崩壊
アンブレラの崩壊の直接的なきっかけはラクーンシティ事件ですが、その後どのような末路を辿ったのか?
ナンバリングタイトルや外伝的な作品でも語られていない部分が多いため、正確に把握している人も少ないかと。
アフリカ研究所の閉鎖
アンブレラのウィルス開発の原点である始祖花と始祖ウィルス。
当初始祖ウィルスは始祖花からしか採取できず、また始祖ウィルスを宿す始祖花は原産地でしか栽培できませんでした。
しかしマーカスの弟子といえるアフリカ研究所所長のブランドン・ベイリーが始祖ウィルスの培養法を確立し、ウィルスの安定供給源となっていました。
そんなアンブレラの最重要極秘事項となっていたアフリカ研究所ですが、ラクーンシティ事件直後に機密漏れを防ぐために閉鎖。
バイオハザード5までの間、トライセル者とウェスカーに利用されるまでは放置されることになります。
アンブレラの各施設の崩壊
ラクーンシティ事件前後に行動を起こしたクリスやクレア、ジル達によってアンブレラの研究所は崩壊していきます。
アンブレラ幹部養成施設のロック・フォード島。
アシュフォード家主導の研究施設だった南極基地。
ロシアのコーカサス研究所。
こうした施設が私的、または国家の主導などにより崩壊。
特にそれによりアンブレラの最高幹部の一人のセルゲイの死亡と、中枢システムのレッドクイーンの抹消は致命的だったでしょう。
こうしたことが繰り返され、アンブレラの「裏」部分は崩壊の一途を辿っていきます。
アンブレラ社の敗訴と消滅
ラクーンシティ事件(1998年)の5年後、2003年にアンブレラはラクーンシティでの責任を問われた裁判で敗訴。
これにより公的にアンブレラは消滅します。
各研究施設の崩壊による情報漏洩もあったのでしょうが、一番の要因はウェスカーが流した詳細なアンブレラのデータでしょう。
アンブレラが裏でやってきたことが世界中に知れ渡り、後世にまで残る悪名として刻まれることになります。
スペンサーの末路
アンブレラ崩壊によりスペンサーは権力と研究機関を全て喪失。
その後も野望を捨てられなかったスペンサーは、自分の邸宅で長年使えてきた執事とともに細々とウィルス研究を続けていました。
しかしスペンサー自身の研究者としての才覚はマーカスらに及ぶものではなく、またウィルスそのものや研究設備も満足行くものではありません。
結局現状を打開できることはなく、信頼してきた執事にも暇を出すことに。
その直後にウェスカーが来訪し、彼に自身の野望を吐露した後に殺害され、アンブレラは完全なる終焉を迎えます。
凋落の要因
作中でのアンブレラはアメリカ政府とも癒着するほどの世界有数の製薬会社として君臨しています。
が、第一作「バイオハザード」から数年の期間で倒産するまでに落ちぶれます。
原因はいくつかありますが、その全てにスペンサーが関係しています。
直接的な原因はラクーンシティでのバイオハザードですが、その予兆やそれにつながる要因はいくらでもあり、それらが積もり積もった結果です。
ではアンブレラ没落の原因をいくつか挙げていきます。
危機管理能力の欠如
最大の問題はアンブレラには危機管理能力が皆無といっていいほど無い点でしょう。
ウィルスを扱っている自覚があるのかというレベルで、管理体制が杜撰な状態になってます。
どのくらいかというとウィルス研究所の廃液などをそのまま下水道に流している、といえばヤバさが分かるかと。
実際ラクーンシティの下水道ではバイオハザードが起きる前から、アンブレラ社が把握していない未知のクリーチャーが発生しているくらいです。
はっきりいって映画版バイオハザードのように世界が滅んでないのが不思議なくらいです。
それに洋館事件でもラクーンシティでも、バイオハザードの発生は人災によるウィルス漏洩が最大の原因。
ウィルスを扱う上で何をしてはいけないのかを認識していないといっても過言じゃないです。
また明確に言及されているわけではありませんが、ジェームズ・マーカスが死んだことによりるウィルス管理体制が崩壊しはじめた可能性が高いです。
マーカスは規律に厳しく、同時に生化学者の天才でもあったため、ウィルス漏れなどを防ぐために厳しく管理していた可能性はあります。
しかし彼という「ウィルス研究の現場管理者」を暗殺した結果、そういった管理がおざなりに。
事実彼の死から3年後にはt-ウィルスが南米の麻薬王ハヴィエ・ヒダルゴに流れています。
他にもU.B.C.S(アンブレラバイオハザード対策部隊)やU.S.S(アンブレラ保安警察)の設立と規模の拡大。
この2つの部隊、特にU.B.C.Sにはウィルス漏れなどによるB.O.Wの鎮圧も主目的に入っています。
つまりラクーンシティほどではないにしろアンブレラ内の研究所では小規模なバイオハザードが多発していた可能性があります。
実際ラクーンシティの悲劇の原因は、U.S.Sが裏切り寸前のウィリアムからG-ウィルスを奪取しようとした際、あろうことかウィルス研究所内で銃火器を使用したのが原因。
何処にウィルス保管器があるかわからない状況で、どこに当たるかわからない銃を使うなんて素人レベルのミスです。
…厳密にいえば瀕死のウィリアムが自身にG-ウィルスを投与した結果暴走し、ウィルスサンプルを持ったU.S.Sを襲ったからですが。
どちらにしろ特殊部隊員が丸腰の研究員を素手で鎮圧・拘束しなかったのがきっかけです。
ウィルスに対する危険性を社内で共有、扱いをマニュアル化できていなかったのでしょう。
スペンサーの権力欲
スペンサーは「自身が神となる」の野心の通り、とんでもなくプライドが高く、権力欲も強いです。
それはアンブレラ創設者でもある同士ジェームズ・マーカスとエドワード・アシュフォードの暗殺にも表れています。
彼らが生きて実権や人望を得ている以上、会社を自分の思う通りに(野望に直接利用)できません。
そのため権力の一本化ということで自身に権力を集中させています。
ただしスペンサー・マーカス・アシュフォードの3人が揃っていたからアンブレラのバランスが取れていた部分もあるため、彼らの排除が間接的にアンブレラ崩壊の一因となっています。
特にマーカスの暗殺によって社内の危機管理体制にほころびが出た可能性もあるので、アンブレラ社崩壊の直接の原因のきっかけにもなってます。
部下の冷遇
スペンサーは自身の権力を高めることには精力的でしたが、部下に対する評価はおざなりだった部分もあります。
例えばマーカスを彼の弟子のウェスカーとウィリアムに暗殺させていますが、それに対する目に見えた功績は与えているとはいいがたいです。
両者ともマーカスに目をかけられるほど有能で、ウィリアムはG-ウィルスの発見者、ウェスカーに至っては自身が独自に立ち上げていた「ウェスカー計画」の優秀な被験者。
しかしマーカスの暗殺から10年経ってもアンブレラの幹部の末席にも入っていません。
ウェスカーはS.T.A.R.Sの部隊長という現場管理職。
ウィリアムも自身の研究課題こそ持っていられたものの、幹部クラスにもなっていません。
そのためウェスカーはラクーンシティ事件直前にアンブレラを離反、ライバル会社のH.C.Fに鞍替えしています。
ウィリアムもG-ウィルスが完成さえしてしまえば裏切る気だったようです。
…まあ裏切りがバレてラクーンシティ事件の直前に殺されていますが。
彼が信頼していたと察せられるのは、アンブレラに忠誠を誓っていた「セルゲイ・ウラジーミル」。
「ウェスカー計画」の被験者の「アルバート・ウェスカー」「アレックス・ウェスカー」。
そして自身に長年使えてくれた執事。
作中で明記されている人物だとこれくらいでしょう。
それでもその信頼に足る地位を持たせていたとは思えない部分もあるので、信頼されてすらいない者からすれば裏切る気も出るでしょう。
ウェスカーに至ってはアンブレラ社を裏切った直後に機密文書などを流出させて、アンブレラの進退にトドメを刺しています。
アレックスにはスペンサー自身の延命のための不老不死の研究を指示していましたが、結局研究成果と実験体を持ち逃げされる始末。
最期の悪あがきで自身の邸宅で、執事のサポートがあったとはいえ、実質一人だけの研究をし続けることになります。
アンブレラの負債
アンブレラが崩壊したことは、必ずしも良い面だけではありません。
所属していた表・裏の人材や技術・ウィルス等が世界中に流出してしまいます。
これによってバイオハザード3以降の事件が直接的・間接的に起こることになります。
t-ウィルスが世界中に拡散
アンブレラが崩壊したことにより起きたのがt-ウィルスが世界中に流出したこと。
アンブレラは社内でのバイオハザードを鎮圧するためにU.B.C.Sを組織するほど、B.O.Wの暴走事故などが起きています。
そんな杜撰な管理体制の中で会社が倒産寸前にまでなれば、当然さらに管理体制はおざなりになります。
倒産前に合法・非合法問わず、持てる者もって会社から逃げ出す者もいるでしょう。
そういう目端が利く者ほど高い地位を持っていたりするので、社内を統制する立場の人間も激減します。
その結果社内の研究所などでのバイオハザードが多発。
ラクーンシティ事件直後にクリスやクレア達がアンブレラの施設に潜入などしていますが、悉くゾンビの巣窟となっています。
幸い映画版のようなパンデミックが起きるほどではありませんでしたが、このようにウィルスの流出元が多数出現。
それによってウィルスサンプルを入手できる機会が増え、小規模なテロ組織でも大規模なバイオテロを起こせるようになってしまいます。
人材の拡散
アンブレラ社の崩壊はウィルスの拡散だけでなく、所属していた裏の人員の拡散も引き起こしています。
基本的に会社の不祥事は経営陣が責任を取る形になるため、倒産したとしても社員はおとがめなし。
そのためかなり後ろ暗いことをしていたとしても、堂々と表を歩ける者もいたりします。
その結果他の製薬会社に移籍したり、テロ組織に所属したり、あるいは独自の組織を作り出したものだっています。
例えばバイオハザード4でロス・イルミナドスでプラーガの研究に協力していたルイス・セラ。
バイオハザード・ディジェネレーションでは、tやG-ウィルスを盗み出して裏組織に売ろうとしてたフレデリック・ダウニング。
バイオハザード7以降で登場する組織「コネクション」を作った、アフリカ研究所の所長だったブランドン・ベイリー。
このように小悪党レベルから、幹部クラスの人材まで野に放たれる結果となっています。
「ウェスカー」の独自行動
スペンサーが独自に進めていた肝いりの計画の「ウェスカー計画」。
才覚ある者を集めて訓練や英才教育を施し、「神」に相応しい頭脳や肉体を持つものを作り出そうというのがウェスカー計画の概要です。
計画の最終段階では特別なウィルスを投与してその経過を研究し、スペンサー自身が神になるためのテストケースにするのが目的でした。
しかしこのウィルス投与の段階でほとんどの被験者が死亡し、生き残ったのはアルバート・ウェスカーとアレックス・ウェスカーの2名のみ。
たった2名とはいえ、作中のアルバート・ウェスカーのように軽く人間を超えたスペックを持つようになったため、頭脳や野心を踏まえると脅威です。
実際生き残りの片割れのアレックスは、島一つ支配して人体実験し続け、自身の「死」を克服するための「転生の儀」を研究していましたし。
しかもアレックスは被検体の少女「ナタリア・コルダ」に「転生」している気配があるため、ウェスカーの脅威は去っていない可能性も示唆されています。
贖罪のために…
アンブレラが倒産してから数年後の2007年、元アンブレラの人員を中心とした「青いアンブレラ」が生まれます。
正式名称はアンブレラのままですが、会社ロゴには元のアンブレラのマークの赤い部分を青くしたものを採用したため、俗称ととしてこう呼ばれています。
アンブレラという大企業の倒産によって職を失った社員は大多数存在します。
そしていかに罪に問われなかったとはいえ、自分の来歴に「アンブレラ」という単語が付くだけで準犯罪者扱いされ、なかなか職を見つけられなかった人も多かったのでしょう。
そういった人たちが「自分たちはアンブレラ上層部のような人間じゃない」という主張を込めて、対バイオテロを目的とした民間軍事会社(PMC)としてアンブレラを再建しています。
元アンブレラの社員で構成されているため技術などをそのまま受け継いでおり、それを利用した対B.O.Wなどの兵装も作り出しています。
バイオハザード7では身の潔白の証明のためか監視要員としてか、アンブレラ憎しで知られるクリス・レッドフィールドを軍事顧問として招致。
他にもバイオハザード・ヴェンデッダではA-ウィルスの映像データをレベッカに提供したり、バイオハザード8では開発した自社兵装をB.S.A.Aに提供もしていたりします。
バイオハザード8でB.S.A.Aが不穏な気配を出し始めているので、もしかしたらアンブレラ社とB.S.A.Aの立場が逆転する可能性もあるかもしれません。