技術の進歩で逆にゲーム開発が長引く…零細ゲーム会社は1ハード1本が限界?

サブカルチャーゲーム,サブカルチャー

PS5・ニンテンドーSwitch・XBox series X/S…。

数年に一度のタイミングで新世代のゲームハードが出て、ゲームの質も常に向上しています。

しかし昔からゲームをしている人は「なんかゲームが少なくなった?」あるいは「買うゲーム数が減った」なんて感じてないでしょうか?

今回は特にPSハードのゲームに着目して、ゲーム業界がどれだけ苦しい現状にあるかを書いていきたいと思います。

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ハード更新ごとにソフト数も減る

実際のところ新ハードになるたびに開発されているソフト数は激減しています。

ゲーム販売数が最盛期だったのは2000年代前半まで。

つまりPS2・GC・Xboxの世代までになります。

それ以降のPS3・Wii・Xbox360といったハードが世に出て以降、販売されるゲームソフト数は徐々に減少しています。

例えば「モンスターハンター」や「デビルメイクライ」などを代表作をするCAPCOM。

各PSハードのみに絞って見てみると、各年代でのソフト販売数はこうなります。

ソフト販売数
初代PS4313本
PS22545本
PS357本
PS442本

見るからに販売数が激減しているのが分かるかと。

特にPS2とPS3間でのゲーム開発は雲泥の差です。

そして各ハードごとに、新ハードが販売されてからのソフト販売数の推移はこうなります。

新ハード経過年数初代PSPS2PS3PS4
1年目17125
2年目135253
3年目451290
4年目5215814(1)4(2)
5年目67364659(6)
6年目8226507(2)8(4)
7年目7548(4)10(8)
8年目51211(4)4(1)
9年目2708(3)4(3)
10年目1247(3)2(1)
11年目2541(1)
12年目92(1)
13年目
14年目1

()内は過去作のリメイクやコレクション・追加要素といった形で販売したソフトになります。

各ハードの発売日ですが、初代PSは1994年、PS2は2000年、PS3は2005年、PS4は2012年。

新ハードを発売してしばらくはそのハードが主流になる時代で、その前の世代のハードのソフトは当然開発されなくなっていきます。

ただ各経過年数の推移を見てもらうと分かる通り、PS3といった大幅進化したハードからは開発速度が鈍化しています。

CAPCOMだけでの話ですが、PS2時代には1年に100本単位で販売していたのが、PS3時代からは年間10本出せれば多い方になるほどです。

ただし、その内の半分は過去作のリメイク・コレクションといった、完全新規開発ではないという状態。

しかも初動開発も遅れており、PS2時代は初年度に100本以上販売していたのが、PS3時代には新ハード発売から4年目という事実。

カプコンはWii・DS発売から任天堂ハードでのソフト販売が増加しましたが、ここまで他ハードでの販売数が減るのは異常に見えるでしょう。

ではなぜここまで目に見える形でゲーム開発が鈍化してしまったのか?

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開発が鈍化した理由

新ハードが開発されるにつれ、なぜゲーム開発速度が急速に鈍化してしまったのか?

その大きな理由は「新ハードでのやれることの多さ」や「ゲーム開発コストの増加」「コスト回収ができないリスク」です。

ゲーム規模の拡大

新ハードになるたびにスペックも更新され、ゲームで再現できることも増えていきます。

そうなれば当然開発にかかる期間も増加するため、どうしても1年に出せるゲームにも限りが出ます。

ゲームは年を経るごとに進化し、グラフィックを初めとして、ゲームシステムやハードそのものの機能を向上されてきました。

2000年以降に産まれた人は分からないでしょうが、初代PSでカクカクのポリゴングラフィックですら絶賛された時代があるくらいです。

それ以降グラフィックは「分かりやすい進化」として、より細かく・美しく描写されるようになっていきます。

他にも、PS3以降はオンライン機能が標準装備され、オンラインゲームやPS Storeといった専用オンラインショップまであります。

しかし初代PSではそんなもの影も形もありませんし、PS2では限定的ながらもありましたが、ゲームごとにオンライン契約する手間があったほどです。

こうした機能の拡充はユーザーからは歓迎されましたが、その反面ゲームの開発規模が必然的に増加することに。

初代PSあたりは、単純なプログラムでもまだゲームとして成立していた部分がありました。

しかしそれ以降はゲームプログラム以外の労力が爆発的に増加していきます。

例えばグラフィックの作成。

グラフィックを作る作業工程はもちろんのこと、そのグラフィックがゲーム内にしっかり反映されるようにするプログラムなど。

あるいはオンラインで、他のユーザーの無軌道な操作にも同期・対応できるようなシステム開発。

挙げていけばキリがありません。

こうしたゲームを開発するための時間が増えれば、当然他のゲームを作る時間は激減します。

例えばCAPCOMが販売した、世界的にヒットした名作「モンスターハンター ワールド(以下MHW)」。

2018年に発売されたMHWの開発期間は約4年間かかっており、逆算すると開発開始は2014年。

初代MHも開発に4年ほどかかったそうですが、これのほとんどは構想期間で、実際のプログラムなどの開発期間は1年ちょっとだそうです。

ゲームコンセプト・モンスターの作成などを少数ながらも3年費やし、ゲーム内容がほとんど固まったら1年少しで一気に仕上げたのが初代MHです。

しかしMHWは「MHWならではのコンセプト」はともかく、世界観などのゲームそのもののコンセプトやシステムはすでにある状態で4年。

同じ4年でも作業密度にはかなりの差があります。

そして開発に4年かかるということは、新ハード発売直後に開発し始めた場合、その2~3年後にはまた新ハード発売で世代交代するレベルです。

この2014年、「モンスターハンター4G(以下MH4G)」が発売された年で、前作の「モンスターハンターXX(以下MHXX)」どころか、「モンスターハンターX(以下MHX)」を含む2作品分を跨いで開発されたゲームになります。

発売日ですが、MH4Gが2014年、MHXが2015年、MHXXが2017年となり、地味に他のゲームも同時並行で開発していたりすることに。

CAPCOMではないですが、他にも有名なシリーズとなった「GOD OF WAR」もそうです。

PS4で開発・発売された、北欧を舞台にした新「GOD OF WAR」の開発にも5年以上の年月をかけてます。

こちらも前作(God of War Assension)と同時並行で開発が進められていました。

実際プレイしてみると、前作の時点で次作の技術を使ったようなシステムがチラホラ見られたり。

並行開発しているゲームのシステムを流用しているか、そちらに切り替えるための試験的な部分もあったのでしょう。

このよう開発期間が増大したことで、前作を作っている状態でさらに次のゲームを開発しているのも珍しくなくなってきています。

ゲーム開発コストの増大

ゲーム開発するための費用はPS2時代に比べ数倍~数十倍にまで膨れ上がってます

ゲーム開発期間が延びれば、当然それにかかるコストも増大します。

社員の給料・経費・設備維持費などなど…。

例えばCAPCOMですが、求人を見てみると一般正社員の給料は年収400~600万円くらいで募集をかけてます。

これが1社員のコストの最低値。

そして一つのゲームを開発するのには、規模にもよりますが大体20~50人くらいだそうです。

つまり最低でも1本のゲームを1年開発する際の人件費だけでも8000万円~2億円かかる計算になります。

そしてMHWの開発人数ですが最大で約200人体制で開発していたそうです。

最低でも年収400万円の社員を200名弱を4年間労働。

単純ながら計算してみると、MHWの開発中の人件費は少なくても約20~30億円ほどという膨大な額になります。

もちろん平社員と役職持ちでは給料は違ってくるでしょうから、人件費はもっと上になります。

これに加えて開発環境を整えるための設備投資などの経費を加えるともっと増えます。

ちなみに、22年度のCAPCOMの研究・開発費は298億円

開発していたすべてのゲームの総額ですが、相当な額です。

コストは開発期間の増大と比例して多くなっていくので、新ハードになればなるほど開発費用は増えていきます。

そのためハードに見合ったゲームが作れず、老舗のゲーム会社でも1ハードで数本できれば良い方、となってきています。

最悪ゲーム開発費用を用意できずに破産、あるいは吸収合併するようなゲーム会社も。

私のプレイしたゲームでは、「スパロボ」シリーズで有名なバンプレストが、バンダイナムコエンタテインメントに吸収合併されています。

開発・販売そのもののリスクの増加

利益が出なければ赤字・破産」。

これはゲーム会社に関わらず、どんな会社でも同じです。

しかしゲーム会社では上記の通り「開発期間」と「開発コスト」がどんどん増大しています。

基本的にゲームを売って得た利益を次のゲームの開発の費用に充てるのが普通です。

しかし昨今では開発コストの増大によって「赤字にならない販売数」まで増加しています。

PS2時代には「ミリオン(100万)セラー」を達成すれば大ヒット、一つ下の単位の10万本の売り上げでも普通にヒットという認識でした。

しかし今(PS3以降)では10万本の販売数でようやくまとも、といった感じです。

PS2時代はゲーム1本の開発期間もまだ短かったため、よほど凝ったゲームでもなければ、あるいはシリーズ化してゲームの土台が出来上がっていればかなり短期間で開発・販売できました。

実際初代MHから実質的な続編となるMH2の発売には2年ほどとなっています。

そのため開発コストもかさまず、販売本数が少なくても赤字にならずに済む場合も。

しかし今では大作ゲームとなると開発費が数十億円というゲームも珍しくなく、ミリオンセラーでも出さないと赤字になるリスクが高くなってます。

ゲーム1本の利益は各会社によって増減があるそうですが、メーカーに入る利益はソフトの値段の大体3~5割くらい、だそうです。

ゲーム1本の値段が8000円くらいとすると、利益は最大でも約4000円ほど。

10万本売れれば4億円、100万本(ミリオンセラー)でようやく40億円。

何十億円もかけて開発したゲームでは、場合によってはミリオンセラーでも赤字になる、ということです。

これでは小規模のゲーム会社では大作ゲームは作りにくいですし、もし売れない(爆死)でもすれば経営難に一直線です。

こうしたことから大手の会社の子会社になったり、当たり障りのなさそうなゲームしか開発できなくなってきています。

リマスターと他機種同時販売

ゲーム開発も、ゲームでの利益獲得も困難になっている現状。

そんな状態でよく聞くようになったのが「リマスター」と「他機種販売」です。

リマスターは以前のハードで販売したゲームを、新ハードでも販売すること。

他機種販売はPSハードだけでなく、同時に任天堂ハードやXBoxハード、あるいは上位ハード(PS4とPS5等)で同じゲームを販売すること。

これでゲームの利益率を上げようとするのが当たり前になってきました。

PS2時代はチラホラあった程度の過去作のリマスターですが、PS3以降は爆発的に増加しています。

上の方にあるCAPOCOMの各ゲームハードでの販売ソフト数で、PS3以降には年間に数本ほど、多いと過半数のソフトがリマスターで補われています。

リマスターはぶっちゃけグラフィックを新ハードに対応させればOKなので、本来のゲーム開発に比べれば費用なんて無いようなものです。

極論「低予算で利益が見込めるゲームを作る」のと変わりません。

特にCAPCOMでは「大神」が有名でしょう。

初出はPS2の大神ですが、その後に「Wii」「PS3」「PS4」「PC」「Switch」「Xbox One」と様々なハードでリマスターが発売されています。

名作というのもあるのでしょうが、ここまでリマスターとして発売されているのも珍しいでしょう。

他機種販売は単純にハードを選ばずゲームを購入してもらえるようにするため。

それにイチイチ目当てのゲームのために別ハードを購入するのに躊躇する人もいるでしょうし、これはユーザー・ゲーム会社でWin-Winの関係と言えます。

こうして1本のゲームソフトの利益率を引き上げるために、多くのゲーム会社が既存のゲームを他機種で販売する手法を取っています。

ちなみに「リマスター」と「リメイク」の違いですが、リマスターは「既存のゲームをほぼそのまま再販すること」、リメイクは「ストーリーなどはそのままに、ゲームシステムなどを大幅変更すること」を指します。

先ほど挙げた「大神」がリマスターで、Resident Evil Re2がリメイクになります。

他にも、システム面をそのままに追加要素が加わっただけだとリマスターとなります。

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課金ゲームの大幅増加

昨今のゲーム会社の経営リスクは上記の通りです。

これのせいで課金ゲーム・スマホゲーム参入が大幅に進んだ一面もあります。

ゲーム開発ができなくなったら食い扶持がなくなり、当然ゲーム会社は破産してしまいます。

しかしゲーム開発しかノウハウが無ければ、他の事業への参入もままなりません。

そこで考え付いたのが「1本のゲームの収益を上げる」「低予算で済むスマホゲーム」といった方法です。

課金で収益アップ

ハードの進化によって、オンラインゲームだけでなく「課金で特別アイテムをゲット!」といった課金も手軽にできるようになりました。

それで思いついたのが「ゲーム1本での利益の底上げ」です。

1本のゲームの販売価格は8000円と変わりませんが、課金を加えていけば純利益は跳ね上がります。

課金は基本ダウンロード方式で購入します。

そのため小売店などを通さないため、課金で発生した利益の大半がゲーム会社の懐に入ります

おまけにゲームパッケージのように「売れ残り」といったことも無くなるため、不良在庫といったものからも解放されます。

これのおかげで「売れた本数が少なくても、課金で補填できる」といった状態になってきています。

ゲームで課金した人は良くわかるでしょうが、特別アイテムなら1個100~200円、追加ストーリーなら1000~2000円くらいの値段。

アイテムはともかく、ストーリーの追加なら、大抵のユーザーは気になって購入する人も多いでしょう。

つまりユーザーから見たゲーム1本の実質的な値段が9000~10000円に。

ゲーム会社の純利益なら本来は4000円がいいところだったのが、5000~6000円と2~3割アップということになります。

仮にユーザーの全員が課金を利用したとしたら、例え10万本の売り上げでも、12~13万本相当の利益になる計算に。

これほどの利益率なら、どの会社でも課金システムを導入するのも当然といえるでしょう。

低予算なスマホゲーム

様々な理由で苦境に立たされたゲーム会社ですが、そこで目をつけたのがスマホゲーム。

スマホの普及と共に一気に市場が広がったスマホゲームですが、それはなぜか?

スマホゲームには、現状のゲーム開発において魅力的すぎるメリットが山盛りだからです。

・コストがかからない
・短期間で開発可能
・後付けでゲーム開発可能
・長期間の利益が出るゲームに化けやすい

手軽にできるスマホゲームの開発費用は大体1~5億円、安いと5000万円以下で開発できるそうです。

これは現在のゲーム開発費用の10分の1以下の費用で、PS2時代のゲーム開発費用と同じくらい。

つまりPS2のゲームをスマホでやっている、と言い換えることもできます。

実際スマホのゲームはイラスト主体のゲームが多く、3Dなどの立体的なゲームはまだまだ少ないです。

さすがに解像度といったスペックなどはPS2よりも上なので相応にお金をかけますが、それでも現行のゲーム開発よりもはるかに低予算で済みます。

おまけに開発期間も1年前後とかなり短いため、小規模な会社でも開発できる土台があります。

そしてスマホゲームは発生した利益がダイレクトにゲーム会社の利益になりやすいという点。

仕組みは上記の課金と同じで、小売店を通さないため余計なコストがかからないため。

しかもその手軽さからユーザーも手を出しやすく、ゲームに嵌れば課金も平然としていく人が多いから。

「スマホゲームに数十万課金した」と聞くことも多いでしょうが、1ユーザーあたりの利益率はPS5といったコンシューマゲームよりもはるかに高くなってます。

そしてゲーム開発においてスマホゲーム最大のメリットは、実質未完成でもある程度できていれば発売(配信)できるという点。

ネット主体のゲームなので、ある程度システムやストーリーさえできていれば「第一部」なんて感じで配信可能です。

あとの未完成部分は後日「追加ストーリー」として新たにアップデートすれば良いだけ。

要は「構想は3部作だけど、先に1部だけ配信して後からアップデート」「構想になかったものも後付けで追加できる」という方式が取れるのもスマホゲームの利点です。

大作スマホゲームとして「Fate/Grand Order」がありますが、配信開始は2015年なのに7年以上も利益を出し続けています。

普通のゲームでは7年も経てばワゴンセール行きも珍しくないのに、これだけ長生きのゲームにも化けるのがスマホゲームの特徴です。

こうした分かりやすいメリットが多くあるため、既存・新規問わず多くのゲーム会社が参入しています。

ゲーム開発もどん詰まりに?

ゲーム開発のコストや時間などが増大してきてますが、そろそろ頭打ちにもなってきています。

PS2からPS3へと進化した際には、ゲームのデータ容量やグラフィックなどの解像度のスペックは一気に上がりました。

ただしPS4・PS5とハードが進化しても、目に見えた進歩というのは分かりにくくなっていきます。

要はハードのスペックを100パーセント使いこなすのが困難になっています

確かにグラフィックやデータ処理速度などは向上していますが、はっきりいって「PS3でもできるんじゃ?」なんてゲームも良く見かけると思います。

実際PS4・PS5ですら2Dのゲームや、横スクロールのゲームだってあります。

それに「ストリートファイター」や「鉄拳」といった格闘ゲームなんて、グラフィックの向上以外は以前と同じシステムです。

ハードスペックを持て余しているということは、それ以上ハードが進歩しても劇的な変化は見込めないということ。

変化が出てこなければ、それに伴うゲーム開発も以前とさほど変りません。

個人的な感想ですが「PS4→PS5で特に何か変わったか?」というのが正直な気持ちです。

ぶっちゃけ5年くらいで新ハードに変えなくても、10年くらいは現状のゲーム環境でも十分楽しめます。

次々新ハードへと買い換えないといけないと思うと億劫になりますし、できれば1つのハードで長くゲーム開発してほしいです。

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