ウィルスと細菌の違い。その特徴や治療法・予防法
インフルエンザや新型コロナといった「ウィルス」と、感染症にはO157やサルモネラ菌といった「細菌」が原因のものに分かれています。
この2種類は同じように見えても生態や治療法などはまったく違います。
ではそれぞれがどういった部分が違うのか紹介していきます。
ウィルス
生態
ウィルスは細菌とは違い一般的な生物ではありません。ここが大きな違いになります。
普通の生き物というのは細胞を持っており、「単細胞生物」「多細胞生物」と分かれています。
細胞にはDNAなどがある細胞の核を守る細胞膜あるのですが、ウィルスには細胞膜はなく「核」単体で存在しています。
これはウィルスの形状の一例です。
細菌と比べると似ても似つかない形状をしています。
ウィルスの繁殖方法もかなり違い、細菌は普通(?)の工程を経て増えていくのに対し、ウィルスは人の細胞を侵食して自分自身をコピーして増えていきます。
ウィルスは他の細胞に取り付いて苗床にし、自分の遺伝子情報で「上書き」して増殖します。
細菌は単一で繁殖できますがウィルスは他の細胞がいないと繁殖できません。
生物学的にもかなり特殊な生態をしているため「ウィルスを生物として分類していいのか?」という議論が行われるほどです。
こうした理由からウィルス単体で生存していることは少なく、他の生物に寄生するような形で生存している場合が多いです。
新型コロナといったウィルスの最初の感染源は野生の動物ですし、その動物に接触した人から拡散していきます。
弱点として長期間空気に触れていると生存は困難になります。
空気感染するウィルスでも本体の寿命がありますし、宿主がいないと増えることもできません。
生存能力という点では宿主となる生物の有無に依存するため、繁殖能力は高くともかなり極端な性質を持っています。
大きさ
ウィルスの種類にもよりますが、大きさは0.1マイクロメートル前後とかなり微細です。
0.1マイクロメートルは、1ミリメートルの10000分の1のサイズです。
先ほど書いた「細胞膜が無い」「核単体で存在」という部分。
これは細胞よりも小さいことになります。
ただウィルスは主に飛沫感染がメインの感染経路です。
飛沫感染は飛沫にウィルスが混入した状態のことのため、実質的なサイズは飛沫の大きさになります。
そのため感染媒体のサイズという意味では、飛沫の約2~5マイクロメートルとなります。
引き起こす症状
ウィルスに感染すると以下のような症状が出ることが多いです。
・めまい
・炎症
・下痢
・麻疹
程度の差はあれど、よほど特殊なウィルスでもなければ風邪の延長上のような症状が出ることが多いです。
ウィルスは細胞以下といった極小さいレベルで活動するため、身体の各所でさまざまな影響を与えます。
発熱はウィルスを退治するために身体が温度を上げるので、直接的な原因ではありません。
しかし炎症や麻疹といったものはウィルスが細胞を攻撃するために起こるものです。
ウィルスは空気・飛沫感染などで感染することが多く、鼻や喉・肺といった呼吸器官が真っ先に影響を受けます。
例えば風邪で出る黄色い鼻水やたんといったものは汚染された体液です。
肺炎といった重度の症状が出ることもあります。
腸に到達すると腸内細胞を攻撃するため、下痢といった症状を出しやすくなります。
しかしウィルスの繁殖方法の関係から宿主となる生物が生きていないと繁殖できないため、即日で命に関わるようなウィルスは少ないです。
ある程度の共生能力は持っているものかと。
逆に症状が長期化しやすいともいえるため、長期に渡って体内にウィルスが残る場合も多いです。
しかしエボラ出血熱といった即日で命に関わるウィルスも存在しているため、かなりピンキリな存在といえるでしょう。
予防法
基本的にはワクチンを使った予防接種が推奨されています。
ワクチンは毒性を無くした・弱めたウィルスを使って身体の免疫力を強くするものです。
そのためワクチン接種のあとに毒性が強い同じウィルスに感染しても、ウィルス撃退の予行演習が済んでいるため感染する可能性が低くなります。
しかしワクチン接種しても身体が弱ると総合的な免疫力が減少するため、ウィルスに感染する可能性もあります。
あるいは高濃度のウィルスが体内に入り込むと対処しきれなくなって感染することもあります。
ワクチン接種したからといって調子に乗った行動は慎むようにしましょう。
治療法
ウィルスに対する明確な治療法はほとんど確立されていません。
理由としてはウィルスの変異性の高さと、薬の悪影響が大きな原因となります。
変異性
例えばインフルエンザウィルスといっても「豚」や「鳥」とった複数の種類に分類されています。
これは感染した宿主に合わせてウィルスも変異するため、今までのウィルスとは特性が違ったものになりやすいからです。
ウィルスは感染した宿主の細胞に自らをコピーさせて増殖するため、当然宿主の遺伝子情報などの影響を受けます。
そのため変異したウィルスではワクチンに耐性を得たり、そもそも効果が無くなる場合があります。
こうしたことから既存の薬やワクチンなどでは効果が期待できず、新しく作り直す手間が生まれます。
薬の悪影響
ウィルスはかなり小さいため、身体中のいたるところ、あるいは一部分に隙間なく密集して増殖していきます。
しかしウィルスを直接殺せるような強い殺菌力を持つ薬品だと身体中の細胞に多大な影響が出ます。
ジャンルは違いますが「抗ガン剤の投与で髪が抜け落ちる」「意識が朦朧とする」というのを聞いたことがあると思います。
そういった理由で「薬を投与したせいで命に関わる」といった本末転倒なことにならないためにも、人が本来持つ免疫力の強化に重点が置かれています。
市販の風邪薬なども炎症を抑えるだけで風邪のウィルスを殺菌する効果はありません。
あくまで炎症を無理やり抑えて症状を緩和しているだけでウィルスはまだ身体の中に残っています。
薬を飲んでも無理に動いたりすると簡単に悪化するため、完全に治るまでは安静にしておきましょう。
細菌
生態
細菌はバクテリアともいわれ、単細胞生物や多細胞生物の微生物に分類されます。
アメーバなんかと似たようなものです。
これは細菌として有名な大腸菌の形状。
細菌を構成する細胞は以下のもので構成されています。
・核の外側に「中心体」や「ミトコンドリア」など
・核を覆う「細胞膜」
このように3層に分けられて構成されています。
アメーバのような単細胞生物なら細胞ひとつだけ。
ミジンコのような多細胞生物なら複数の細胞で構成されています。
細菌も同じで単一か複数の細胞で構成されています。
繁殖方法も他の動物と同じで、食事をして細胞を増やして分裂したりして増えていきます。
そうしたことから単一での生存能力はウィルスよりもはるかに高く、自然界のいたるところに生息しています。
人に感染しなくとも有機物があればエサにして繁殖できるため、そのへんの土や河川の水といったところには大量にいます。
見た目キレイな清流にも関係なく存在しているので生水などを飲むのはやめましょう。
大きさ
細菌は多細胞生物なので、細胞以下のサイズのウィルスよりもはるかに大きいです。
さきほどの大腸菌なら2マイクロメートルと、ウィルスの約20倍の大きさです。
この大きさのせいで重くなり、飛沫感染や空気感染はしにくくなってます。
そのため直接細菌と触れたりしない限りは感染確率は低くなります。
引き起こす症状
細菌による感染症では短期の内に命に関わる症状が出やすいです。
細菌というのは微生物でもあるため、人体に感染すると細胞(人の身体)を食べて生存することが多いです。
数年前にテレビで放映された「人喰いアメーバ」「人喰いバクテリア」という微生物を知っているでしょうか?
このアメーバは体内に入り込むと脳まで移動して脳細胞を食べてしまいます。
あるいはO157は大腸菌が原因で起きますが、これは大量発生した大腸菌が出す毒素が原因です。
単純に体内で毒が発生し続けているわけですから放置すれば命に関わります。
こういった毒素は細胞を壊死させるため、それが原因で出血したり臓器が機能不全に陥ることも多いです。
予防法
細菌による感染症にもウィルス同様にワクチン接種などで予防することが多いです。
ウィルスの予防接種と同じで毒性を弱めたりした細菌を投与して、身体の免疫力を鍛えます。
しかし自然界のいたるところに生息しているため、感染率が低い細菌でも手洗いを忘れただけでも感染することがあります。
土や泥といった微生物が住み着いているようなものに触れたら必ず手を洗うようにしましょう。
治療法
細菌による感染症の治療法には抗生物質を使った方法があります。
ただ抗生物質は細菌そのものを殺すのではなく、細菌の繁殖を妨害して増殖を抑えることで症状を緩和します。
有名な抗生物質としては「ペニシリン」などが挙げられ、これ一種類で複数の細菌による感染症の治療に使えます。
しかし最終的に頼るのは個人の免疫力になるため、手遅れな状態で抗生物質を投与しても充分な効果を得られないこともあります。
しかも中途半端な量の抗生物質を投与すると細菌に耐性ができてしまい、以降の効き目がかなり低下してしまいます。
もし抗生物質を処方されるようなことがあったら、絶対に適正量を正確な頻度で使い切るようにしましょう。
※乳酸菌と雑菌の違い
オマケの豆知識程度に「菌」つながりで、乳酸菌と細菌といった雑菌の違いは人類の主観によって決定されています。
簡単にいえば人に有益な菌が乳酸菌、人に有害な菌が雑菌・細菌と位置付けられています。
乳酸菌は体内でアミノ酸といった人体に必要な栄養素をつくりだしてくれます。
しかしその他の雑菌類は毒素や人にとって有害なたんぱく質などを生成するためこのような扱いをされています。
もし人の進化の過程で身体の構造などが違っていたら、乳酸菌であるビフィズス菌が「細菌」、大腸菌が「乳酸菌」なんて扱いになっていたかもしれません。
まとめ
ウィルスと細菌では一般人にとっては変わらないように思えますが、一番の違いは治療法です。
細菌に対しては抗生物質という明確な治療薬があります。
が、ウィルスに関しては明確な効果が保証された治療薬というのはかなり少ないのが実情です。
一般的な薬局などで販売されている薬はあくまで「症状を緩和する」のであって、ウィルスを直接殺しているわけではありません。
それにしたってあくまで最終的に自分の体を治すのは自分自身の免疫力です。
くれぐれも薬を過信しての行動は控えるようにしましょう。