野菜の種を発芽させやすくする・丈夫な苗にする方法
野菜の栽培シーズンになれば、多種多様な野菜の種が販売され始めます。
しかし「種が発芽しない」「うまく苗に成長しない」という経験がある人も。
野菜というのはある程度成長すれば案外育ってくれます。
そのためうまく発芽させ、丈夫な苗にさえ育てればOKです。
そこで、野菜の種を発芽させやすくする・しっかりした苗にする方法を紹介します。
※ついでに芋やイチゴといった、種以外で育つ野菜のやり方も紹介します。
野菜全般
まずは種から野菜を育てる場合、覚えておくとうまく成長するやり方を紹介します。
大抵の野菜の種で共通で通用するやり方になります。
「種を蒔いても全然芽が出ない!」なんて人は参考にしてください。
新品の種を使う
野菜などの種は毎年新しいものを使いましょう。
野菜の種は1年目でしかまともに発芽しません。
去年使った種だと、発芽率は良くて5割、悪いと1割以下にまで落ち込みます。
数年前ともなるとほぼ発芽しません。
発芽を待つ期間がムダになるので、できるだけ新品の種が望ましいです。
状態が良さそうな種でもこんなものなので、毎年新しく購入しましょう。
水に浸ける
最初から土に種を蒔いても、うまく発芽しないことがあります。
そこで試したいのが以下の方法。
・沈んだ種を選ぶ
この2つをするだけで発芽率は格段に上がります。
種を水に浸ける
種に必要なのは潤沢な水分です。
そのため一晩水に浸けるだけで種が発芽しやすくなります。
土に蒔いて発芽しないのは、土が乾いて水分不足になってしまう場合です。
一晩ほど水に浸しておけば、発芽するだけの水分を吸収してくれます。
2~3日経てば芽が出てくるのも珍しくありません。
ちなみに、これはもやしなどのスプラウトの栽培法でも利用されてる方法です。
ただカボチャやゴーヤといった殻がある種なら殻の一部分をカットしておきましょう。
硬い殻のせいでうまく水が染み込まないため、芽が出るまでの時間が長くなります。
ほんの小さな穴で良いので、殻の中の種を傷つけないように注意して空けましょう。
濡れたキッチンペーパー
一晩漬けて充分水分を含ませたら、濡れたキッチンペーパーを使いましょう。
何日も水に浸けておくと、種が呼吸できなくて窒息してしまうことがあります。
そのため湿らせたキッチンペーパーの上に種を置きます。
湿気のおかげで種が乾燥せず、呼吸もできるので発芽しやすくなります。
発芽率は少々落ちますが、最初からこの方法でも構いません。
沈んた種は発芽率が高い
水に沈んだ種を優先して使いましょう。
水に沈む種は、中身がしっかり詰まった種になります。
しっかりとした中身があれば発芽しやすい種といえます。
逆に浮かんでいる種は発芽しにくいです。
ただピーマンやトマトなどの種は元々軽いため、水に沈みにくいです。
こうした種はこの方法での判別は難しいので注意。
キレイな土
発芽率を上げたいなら、できるだけキレイな土に蒔きましょう。
極端な話、カビが生えているような土に蒔いても、種にカビが生えて発芽しなくなります。
逆にキレイな土に蒔けば、そういった懸念は少なくなります。
種に害が無い・少ない土の種類は以下の通り。
・袋から出したての新品の土
・ゼオライトや赤土といった性質上キレイな土
・熱湯などで殺菌消毒した土
こうした土なら種に害が少ないため、悪影響を受けずに発芽しやすいです。
植え替えが面倒なら、既存の土の上にこれらの土を置いて種を蒔きましょう。
2センチほどの深さ・種の周囲だけでもOKです。
種は複数蒔く
種を蒔くときは、かならず複数個蒔くようにしましょう。
種を1個だけ蒔いても、それが発芽しなければ時間のムダになります。
しかし同カ所に複数種を蒔いておけば保険になります。
蒔き方としては「三点式」が多いです。
このように同じ場所に3つ穴を空けて、それぞれ1個づつ蒔くという方法。
ポットなどを使った栽培でも同じです。
ただ水菜や子カブといった小さい野菜なら適当にバラまく方法でも構いません。
小さい野菜なら、かなり近距離でも案外育ってくれます。
むしろこの方が収穫量が増えます。
温室栽培
寒い時期では発芽率も下がるため、少しでも暖かくする必要があります。
しかし温室なんてなかなか用意できません。
そこで誰でも簡単に作れる簡易温室を紹介します。
…まあ「室」じゃないですが。
使うのは同じブラスチックケース2つだけです。
私はスーパーの野菜サラダパックのプラスチックケースを使ってます。
これの中にポットなどを入れ、同じケースを被せるだけ。
これで日が当たるところに置いておけばOK。
屋外でも、室内の窓際でも構いません。
中の水分も蒸発しにくくなるので、散水しなくても大丈夫です。
ただ置いておくよりも発芽率は上がるので、普段はゴミとして捨てている物を再利用してみましょう。
間引き
芽が出てきたら、一定期間ごとに間引きしましょう。
大根などを複数同カ所で栽培してもまともに育ちません。
そのため良く成長している・丈夫そうな芽を残しましょう。
大体芽が出て1週間時点・2週間時点あたりで間引きをしていけばOKです。
ただ注意したいのが間引きはハサミでするほうが安全です。
ある程度芽が成長すると、根っこが絡み合っていることがあります。
そんな状態で引っこ抜こうとすると、周りの芽まで抜けてしまうことがあります。
あるいは土ごと持ち上げてしまったり。
これは大きくなった芽や、芽の場所が近すぎるとよく起きます。
ハサミで根元付近を切れば安全に間引きができるので覚えておきましょう。
ここまでくれば、丈夫な苗が出来上がっていると思います。
支柱を立てる
苗といえるほど成長したら、支柱を立てるようにしましょう。
支柱を立てないと苗が折れる・歪むことが多々あります。
代表的な野菜ではトマトです。
苗は中途半端に大きく、それでいて少々脆いものが多いです。
そのため強風などで折れてしてまうことがあります。
あるいは少しでも歪みがあると、その影響で変にねじ曲がって成長してしまうことも。
支柱を立てて支える・縛っておけば安定して成長・矯正できます。
ただ支柱を立てるなら「よほど深くに刺す」か「複数使う」のが基本です。
細い支柱だと、野菜の重さや風の影響で倒れてしまいやすいです。
畑など深さに余裕があるなら、大きく太い支柱を1本深く突き刺せばOKです。
あるいは2~3本の支柱を交差するように組み合わせれば、丈夫な支柱になります。
芋類
じゃがいもなどの芋類は種ではなく、「種芋」から育てて栽培します。
芋類は芽かツルさえ成長すれば、よほど環境が悪くなければしっかり育ちます。
そのため安定して芽やツルを出す方法さえわかれば大丈夫です。
※サトイモはちょっと違うので別口で解説。
芽が出た芋
芋の表面に芽が出始めた芋が種芋になります。
気温・室温が20℃を超えてくると種芋から芽が出始めます。
この芽が出た種芋を植えるのが基本です。
逆に芽が出ていない芋を植えないようにしましょう。
芽が出てるかわからないため、かなりヤキモキします。
最悪芽を出すための水分で種芋が腐ってしまうことがあります。
新聞紙などに包んでおくと芽が出やすいので活用してください。
ただじゃがいも・さつまいもで芽が出たあとの扱いに違いが出ます。
じゃがいもの場合
芽が出た種芋の扱いは「切る」「切らない」の2パターンあります。
どちらを選んでも、ちゃんと芽は成長してくれます。
ただ、それぞれメリット・デメリットがあるので好みのほうを選びましょう。
そのまま埋める場合
安全に成長させたいなら、芽が出た芋はそのまま埋めましょう。
病原菌などが侵入する可能性も低いため、安定して芽が成長してくれます。
ただ芽が大量に出てくるため、間引きなどは必須。
基本はこの方法を選ぶと失敗しにくいです。
芋を切る場合
芋を切れば種芋の数を増やせます。
畑などで大量の種芋が必要なときに重宝します。
ただし個々の種芋がダメになる可能性も出てきます。
切った断面から病原菌やカビなどが入って、そのまま腐ってしまう場合も。
そのため芋を切ったらかならず断面を乾燥させましょう。
1日以上乾燥させて断面を固くすれば、土に埋めても腐りにくくなります。
おすすめは灰を断面に塗る方法です。
灰は殺菌効果があり、かつ染み出た水分を吸い取ってくれるため、より腐りにくくなります。
さつまいもの場合
さつまいもでも、種芋の扱いはじゃがいもと同じです。
ただツルが出たらそれを切って、別に植え替える必要があります。
別にそのままでも成長はしますが、栄養の取り合いが起きてマトモに芋が育ちません。
さつまいもを育てるなら1本1本ツルを採って植え替えましょう。
採るタイミングは最低でも10cm以上、できれば20cm以上に成長したツルが良いです。
ある程度成長しないと根付きが悪いですし、成長も遅いです。
出たばかりのツルは種芋から栄養を貰って成長します。
そのため種芋から切り離されると自力で成長しにくいです。
大きくなれば根を張るまでに耐えられるので、それまでツルは放置して様子見しましょう。
サトイモ
芋の中でも少々特殊なのがサトイモです。
「種芋」というのは同じですが、芽の出し方や成長の仕方は大分違います。
親芋を植える
サトイモはどんなサイズでも植えれば芽が出てきます。
土の上に放置しておけば、自然と芽が出てくるくらいにはたくましいです。
ただ注意したいのが親芋は大きいほど収穫量が増える点。
サトイモは親芋のまわりから新しい芋が出てくるようになってます。
親芋が大きいほど子芋が出るスペースが多くなるため、自然と収穫量も増えていきます。
親芋は使いまわせる
他の芋と違って、親芋は何年も使い続けることが可能です。
サトイモは一年だけでなく、何年にも渡って成長し続けます。
最終的なサイズは一般的なものより数倍は大きくなります。
親芋が大きくなれば丈夫に育ちやすく、収穫量も増えていきます。
そのため一年使っても捨てずに翌年も利用しましょう。
成長した親芋自体も食べることができるため、親芋中心で栽培していきましょう。
種芋の判別
サトイモは発芽するかどうかの判別が簡単です。
サトイモの皮を剥くと、こんな凹凸があります。
この凹凸が白っぽいと、そのサトイモは生きている証拠になります。
例え下半分が腐っていたとしても、その部分を切り取って乾燥させれば発芽します。
かなり生命力が高いため、芋の中でも発芽・栽培は用意な部類です。
イチゴ
イチゴは種というよりツル…ランナーを使って繁殖させます。
成長するとイヤってほどランナーが伸びてくるので、イチゴの種(?)には困らないです。
ただ増え方が特殊なせいか、かなりの注意点があります。
ランナーを根付かせる
ランナーがしっかり根付けば問題なく成長してくれます。
ただ、ランナーは単体では成長せず、ツルを通して親から栄養を貰っています。
そのためランナーを切ってから植えてもほとんど根付きません。
しかしランナーから出たイチゴ株を、土の上に置けばすぐに根を伸ばし始めます。
ちょっと引っ張っても抜けないくらい根付けば大丈夫です。
ピンなどでランナーを固定すると根付きやすいので、困ってるなら使ってみましょう。
イチゴ株は大量に確保
ランナー(イチゴ株)は多めに取っておきましょう。
イチゴというのはランナーの時点では良し悪しがわかりにくいです。
「太めのランナーから弱そうな株ができた」「細いランナーから丈夫な苗ができた」とイメージと真逆の結果になることも。
そのためランナーが出たら多めに確保しておきましょう。
※イチゴの収穫期のランナーは栄養を使うため邪魔モノです。
収穫期が終わるまでは適時除去してしまいましょう。
また生えてくるので大丈夫です。
孫株が優秀?
「孫株・玄孫(やしゃご)株のほうが適している」という意見をよく聞きます。
親株から出た最初のランナーのイチゴ株を「子株」といいます。
その子株からまたランナーが出て「孫株」、更に…といった感じで「玄孫株」ができます。
ただ子株は親の病気などをそのまま受け継いでる可能性が高いそうです。
そのため安定している「孫株」「玄孫株」を使うのが一般的とされてます。
玄孫株より下の株は勢いが少なく、成長しにくいので除きます。
ただ子株だけでも5~10本はできるため数の心配は少ないでしょう。
脇芽を取る
苗が成長し始めると、脇の部分から新しい芽が出てくることがあります。
これを「脇芽」といいます。
この脇芽を放置すると、栄養を取られてうまく成長しなくなります。
「新しい芽が出たから、収穫量も増えるかも?」なんて思わないこと。
どんな野菜・果物でもそうですが、栄養は一つの苗にまとめたほうが収穫も良くなります。
メインは新しい株に
2年目以降の話ですが、イチゴの苗は新しいものに順次変えていきましょう。
イチゴは翌年以降も同じ苗から収穫できますが、劣化が激しいです。
収穫量が減ったり、果実が小さくなったりすることが多くなります。
そのためランナーからできた新しい株をメインで栽培し、品質と収穫量を良くしましょう。
イチゴの種もある
「イチゴの種」として販売していることもあります。
発芽率を上げる方法などは野菜の種と同じです。
ただこのイチゴの種は「ワイルドストロベリー(野イチゴ)」という小さいイチゴの場合が多いので注意。
ワイルドストロベリーは2cm前後の小さなイチゴで、どちらかというと「ハーブ」に分類されます。
そのためバジルやミントに並んで、ハーブ売り場に種・苗があることが多いです。
ただ苗の扱いやランナーが出たりと、扱いは普通のイチゴと同じ。
小さい分栽培の手間も少ないので、ちょっとしたイチゴ栽培には向いているかと。
発芽・苗づくりは意外とラク
野菜はけっこうたくましいです。
よほど間違った栽培方法さえしなければ、順調に発芽・成長してくれます。
一番注意したいのが、カビが生える(腐る)という点。
野菜の種の項目でも触れましたが、汚れた土+大量の水分はカビの元です。
どんな野菜でも発芽率を気にするなら、キレイな土と水を使って発芽させましょう。