自宅でつくるおいしい石焼き芋。甘い焼き芋をつくるためのやり方や必要な道具
この時代に知っている人は少ないかもしれませんが、冬の風物詩「い~しや~きいも~」でお馴染みの石焼き芋。
よく焼けて甘い芋だったのを覚えています…が、昔は路上販売の石焼き芋屋さんから買えましたが、今はスーバーなどで買うことがほとんどだと思います。
「できたてのホカホカの焼き芋を食べたい!」と思った人のため、自宅で実際に石焼き芋をつくってみました。
※あえて石焼き芋にするメリットも紹介しているので、よければ参考にしてください。
石焼き芋で用意するもの
ではさっそく自宅で石焼き芋をつくるために準備するものを紹介します。
石
当然ですが石が無いと始まりません。
石焼き芋では石を加熱した際に出る「遠赤外線」を使って間接的に芋を温める(焼く)ことでつくります。
石焼き芋用の石も販売されていますが、そこらへんに転がってる石でも代用できます。
しかし拾った石の場合、最低限満たしたい石の条件は以下のもの。
大きさは1.5~3cm
やってみた感想としては石のサイズは1.5cm~3cmで収めたほうがいいです。
大きすぎると隙間が多くなって加熱箇所にムラができますし、逆に小さすぎると焼けて柔らかくなった芋にめり込みやすくなります。
大体このくらいのサイズが扱いやすく、加熱も隙間なく安定してできました。
突起がない石
石にとがった部分や角ばった部分があると、芋に突き刺さりやすいです。
ある程度丸みがあり少々平べったい石のほうが焼けて柔らかくなった芋に石に刺さったり、めり込んだりしにくかったです。
そこらへんから石を拾おうと思っている人は、特にこの部分に注意しましょう。
※川辺や海といった場所ならこの条件に合った石を拾いやすいです。
特に種類はなんでもいい
はっきりいって石自体の種類はなんでもよく、加熱しても割れないくらいの固さの石ならOKです。
石の採取が面倒な方はホームセンターの園芸品売り場で「玉砂利」という種類の石が、石焼き芋で使える条件に一致しやすいです。
またネットショップなどの通販サイトでは、石焼き芋専用の石も販売しています。
「石焼き芋らしい石」が欲しいなら「黒玉砂利」と検索すれば、まさしく石焼き芋で使っているあの石がヒットするので、こだわりがある人なら調べてみましょう。
また石の量としては1kg、多くても2~3kgあれば充分なので、あまり多く買いすぎないようにしましょう。
しっかり洗う・乾燥させる
どんな石を使うにしても、使う前にはしっかり洗いましょう。
特に最初に使う場合、しっかり洗ってないと石の土汚れが鍋や芋についてしまいます。
土鍋
石焼き芋では土鍋を使うとうまくいきやすいです。
土鍋を使うと加熱後の保温がしやすく、弱火で加熱しても充分に焼き芋ができます。
また「石」焼き芋の通り鍋の中に石を多く入れるため、石の重さなどに耐えるだけの耐久性も必要です。
アルミや鉄・ステンレスの鍋などでもできますが、金属製の鍋だと傷がつきやすく劣化も早いです。
特にアルミといった耐久性の低い鍋を長く使い続けると穴が空く可能性も出てきます。
土鍋ならそういった劣化も少ないので、長く使い続けることができます。
大きさは最低でも内側の直径が20cm以上、深さ10cm以上のものがいいです。
石+芋の高さなのでそれくらいの大きさが無いと鍋蓋が閉められなかったり、蓋の裏に芋が接触することがあります。
3個以上の芋を一度に焼きたいなら直径が30cm以上ある鍋ならなんとか入ります。
あと使うならもう使わなくなった・捨てる予定のものを使いましょう。
いくら耐久性があるといっても、石によって少なからず傷はつきます。
他の料理と兼用するより石焼き芋専用の鍋を用意したほうが無難です。
中には石焼き芋専用の土鍋なども売っているので、新しく用意しようと思っている人はどうぞ。
方法①:一気に焼く
石焼き芋をつくる方法ですが、「一気に焼く方法」と「予熱でじっくり焼く」方法の2つがあります。
まずは「一気に焼く方法」から紹介します。
①鍋に石を敷く
まずは用意した鍋などに石を敷き詰めます。
ここがうまくいってないと総合的な焼ける時間が伸びるので注意しましょう。
石の敷き詰め具合は1~2段ほどで鍋の底が隠れるくらいでも充分です。
むしろ底に敷いた石が多すぎると熱が伝わりにくくなり加熱時間が伸びてしまいます。
入れた芋がしっかり石の上に置けるくらいまで敷き詰めれば充分です。
②芋を入れる
石を入れたら本命の芋を入れます。
このように芋は上に重ねて入れずに、石に直接触れているようにしましょう。
ふかし芋のように何段も積み重ねても、上の芋には熱が届かずしっかり焼けません。
またスーパーなどの石焼き芋のように、芋が埋まるくらいまで石を入れないほうがいいです。
あれは加熱器が周囲全体から加熱できる仕組みになっているので、家庭のコンロでは再現は難しいです。
芋のまわりに石を入れても熱が伝わりにくくなったり、芋をひっくり返すときにかえって面倒になります。
もし石を芋の隙間に入れるなら、図のように芋の半分くらいまでにしましょう。
これでも芋をひっくり返すとき少々面倒なので、好きな方法を選んでください。
ただし後述するアルミホイルを使った方法なら、埋めてしまったほうがかえってうまくいきやすいです。
③65℃前後まで加熱
おいしい焼き芋にするには65℃前後の温度が最適といわれています。
芋に含まれるでんぷん(炭水化物)が甘さのもとになる糖質に変わるには、65℃前後の温度を維持し続ける必要があります。
この温度より低いと固いままの芋になり、逆に高すぎるとパサパサの焼き芋になってしまいます。
こうしたことから耐熱性の温度計を使うとおいしい焼き芋をつくりやすくなります。
芋を入れたら中火で10~20分ほどしたら、どの程度の温度かを確認しましょう。
このくらいの弱火でも充分焼き芋をつくることができました。(まあ自動でこのくらいになってしまうコンロも多いですが)
鍋の大きさにもよりますが、入れられる芋の数は詰めて入れても最大4~5本くらいが限界でしょう。
また灯油ストーブの上に鍋を乗せてすることもできますが、焼き芋の臭いが出るのでその点は考慮してください。
④一定時間で芋をひっくり返す
基本石に触れているところしかうまく加熱されないので、時間が経ったら芋をひっくり返して他の部分も加熱されるようにしましょう。
あらかじめ鍋を予熱していれば10~15分毎に、そうでないなら最初は20~30分したら、あとは10~15分毎に芋をひっくり返します。
※芋や石はかなり熱いので、素手では触らず軍手のようなものをつけるか、トングなどで芋をひっくり返すほうが安全です。
⑤焼け具合の確認
焼けたかどうかの確認方法は菜箸や串などで芋の芯がある真ん中を突き刺して、うまく刺さる・貫通するくらいが目安です。
また芋の皮が乾燥して浮いたような状態になっていれば、中までキチンと加熱されていることが多いです。
たまに芋の中から液体が出てきてることもありますが、それは芋の糖分が濃縮されたものです。
これが出ているとかなり甘く柔らかい部分ができていることが多いので、形を崩さないように気を付けましょう。
⑥1時間くらい続けたら完成!
④~⑤を続けて、早ければ40分~1時間ほどで石焼き芋は完成です。
もちろん芋が小さければもっと早いですし、大きいともう少し加熱する必要があります。
20cm前後の大きさの芋ならこのくらいで焼けるので、少し時間を確保して石焼き芋をしましょう。
方法②:じっくり焼く
「光熱費を減らしたい」「今すぐ食べるわけじゃない」なんて人は、予熱を使った石焼き芋をしてみましょう。
この方法では「焼いている最中の作業を無くす」「芋全体に満遍なく熱を通す」ことを念頭に置いた焼き方になります。
方法①の「一気に焼く」のと同じ部分はありますが、要所で違う部分があるので気を付けてください。
①石を敷き詰める
「一気に焼く」と同じで鍋底に薄く石を敷き詰めます。
②芋にアルミホイルを巻く
予熱で焼く場合はアルミホイルを巻くとうまくいきます。
アルミホイルを巻くことによって保温がしやすくなるため、長時間火を点けていなくても石焼き芋ができやすくなります。
…というよりは予熱を使った焼き方ではアルミホイルを巻かないとうまくいかないことが多いです。
安物のアルミホイルで良いので用意しておきましょう。
③石で埋める
「一気に焼く」方法と違って、芋が埋まるくらい石を入れましょう。
「一気に焼く」方法では芋をひっくり返すのに石が邪魔になるので最低限しか入れていませんでしたが、予熱で焼く場合はできるだけ熱を逃がさない必要があります。
こうすることで数時間でも熱が籠るようになるので、じっくりと芋を加熱し続けることが可能です。
また温度を一定に保ちやすいため蜜化した焼き芋にしやすくなるのも特徴です。
④20~30分加熱
予熱で焼く場合は、入れた石全体が加熱されれば充分になります。
20~30分ほど加熱し続ければ全体に熱が行き渡るため、このくらい加熱したら火を止めましょう。
できれば上部の石の温度が65℃を超えるくらいは加熱しておきたいところです。
調理用の温度計があると温度の把握がしやすいので、持っていない人は用意しておくと便利です。
⑤1~2時間放置
2時間ほど放置すれば芋全体に満遍なく熱が通るので、蜜状になった石焼き芋になっています。
ただ芋が大きすぎると芋の中心まで蜜化していないことがあります。
もしそうなっていたら再度加熱→1時間放置すれば中までしっかり焼けます。
どっちの方法が最適?
今回「一気に焼く」と「予熱で焼く」の2通りの方法を紹介しましたが、どちらでも石焼き芋はしっかりできます。
ただ成功率やでき方に多少の違いが出ます。
一気に焼く
・焼け具合の確認がしやすい
・蜜化しにくい
一気に焼く方法では作業時間も少なく、どの程度焼けたかの確認もしやすくなってます。
そのため石焼き芋に慣れていない人でも失敗しにくく、調理中の軌道修正もしやすいです。
しかし火をずっと点けているため離れられませんし、高温になるため蜜状の焼き芋ではなくフカフカな焼き芋になりやすいです。
予熱で焼く
・蜜化しやすい
・焼け具合の確認がしにくい
予熱で焼く場合は加熱しっぱなしよりも温度を65℃に保ちやすいため、全体が蜜状になった焼き芋にしやすいです。
しっとりして甘い石焼き芋ならこちらのほうがつくりやすいです。
ただ調理時間が長くなりますし、何よりうまく焼けたかの確認がしにくいです。
確認作業で石の中から取り出すのも面倒ですし、調理に慣れていないと食べる直前で火が通っていない、なんてことが多いです。
大きい芋だとこれが顕著なので、ある程度石焼き芋の調理に慣れてからやってみるといいでしょう。
なぜ石焼芋なのか?
芋を使った単純な料理(?)には「ふかし芋」や「焼き芋」などがありますが、なぜ石焼き芋をしようと思ったのか?
味や手間の削減といったメリットがあるのが石焼き芋の特徴です。
甘い芋ができる
石焼き芋では甘い焼き芋がつくりやすいです。
石焼き芋でできた焼き芋ではしっかり加熱できるので、余計な水分が少ない芋が出来上がります。
わかりやすいのが蜜ができるという点。
焼き芋をしていると芋の表面から出てくるドロドロとした液体は、糖質が液状にまで変化したものです。
蒸かし芋では常時水分が供給されているため、蜜ができても水で薄まったり流されてしまうことが多いです。
しかし焼き芋では芋の内部に蜜が留まりやすいため、蒸かし芋に比べて甘さが増しやすいです。
焦げにくい
長時間加熱しても焦げることがないのがポイントです。
直接火で焼くとアルミホイルなどを幾重に巻いても高温すぎて焦げやすいです。(ちなみに火の温度は高いと1000℃を軽く超えます)
しかし焼いた石なら精々数百度と、火に比べ低温ながら調理するには充分な温度です。
このため芋を焦がすことなく、中まで加熱することができます。
極論「ある程度放置できる」ため、精々火元の確認のため同じ部屋にいれば充分だったりします。
甘さが持続
焼き芋でできた蜜といった甘い部分は、冷蔵しても日を跨いでも甘さが持続します。
蜜といった部分は完全に砂糖に変化した状態なので、時間が経っても甘さが劣化しにくいです。
もう一度レンジでチンすれば焼きたての芋を味わうことができます。
そのため一度に何本も焼き芋をつくっても、何日かに分けておいしくたべることが可能です。
他の調理法との違い
ふかし芋の場合
ふかし芋の場合は熱い蒸気で芋を加熱するため、自然と芋の中の水分量が多くなります。これがマズいです。
水分が多くなる分どうしても甘さが薄くなり、イマイチな感じになりやすいです。
ふかし芋で「思ったより甘くない」「何度やっても、どうしても甘くならない」なんて思っている人はこれが原因でもあります。
またキッチンが湯気ですごいことになるので、家の中に湿気をばらまきたくない人にとってはここら辺も遠慮するかと。
七輪の場合
焼き芋に次いで甘い芋をつくりやすいのが、七輪の炭火焼を使って焼き芋をするといいもの。
炭火焼をすると石を使った時のように遠赤外線を発するため、石焼き芋と同じようにつくることができます。
ただし焼けた炭を使うため温度調整がしにくいという点があります。
焼けた炭が多すぎれば温度が上がりすぎ、少ないと充分な温度にならず、炭が燃え尽きてしまえば新たに足さなければいけないと手間があります。
こうした点からコンロと違って一定の温度に保つことが難しいため、それなりに慣れて要領を掴まないと安定して焼き芋ができません。
温度も高温になりやすいためアルミホイルが必須になったりと必要なものも増えることが多いです。
焼き芋の場合
焚火などでする焼き芋の場合は火加減や時間の調整がかなり難しく、焦がしてしまった人も多いはず。
直接火で加熱するため、どんなに頑張って調整しても芋を焦がしやすいです。
また昔は気軽にできた焚火も、今では火事の原因や近所迷惑などを含め法律で禁止される場合も多いので、焼く環境も用意しにくいです。
鍋に石を入れずに直接芋を入れる方法でも、直火に近い温度で焼くのでやはり焦げる可能性は出てきます。
石焼き芋同様に甘い芋はつくれますが、調理に慣れてないと少々難しいと思います。
最後に
これで石焼き芋の調理法+αの紹介を終わります。
やはり石焼き芋でポイントなのは「調理が簡単」なのと「芋の甘さ」になります。
一般家庭で甘い焼き芋をつくりたいなら石焼き芋が手軽なので、甘い芋や昔ながらの石焼き芋を食べたい人は、ぜひこの方法で石焼き芋をつくりましょう!