タイムマシン・タイムパラドックスの概念や仕組み。過去を変えても問題ない?

2021年2月24日サブカルチャーサブカルチャー

タイムマシンを扱う作品においてよく描かれるのが「過去に行って自分が生まれる前に親を殺したらどうなるか」。

通称「親殺しのパラドックス」。

こうしたタイムマシンに関する小難しい解釈は意外と多いです。

実際にタイムマシンを使ったらどうなるのか?

歴史に対する影響は?

タイムマシンに対する最近の解釈を考察していきます。

※映画などの作品のネタバレも含んだりするので、閲覧の際は注意。

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タイムマシンの歴史

タイムマシンという概念を扱った最も古い作品は「アナクロノペテー(時間遡行者)」というもの。

1887年にスペインの作家エンリケ・ガスパール氏が書いた作品だそうです。

ただこの作品では「過去」の部分には触れていますが、「未来」の部分には触れていません。

「未来」の概念を扱ったのは、もう少し月日が経ってから。

1895年にイギリス作家ハーバート・ジョージ・ウェルズ(H・G・ウェルズ)氏が発表した「タイム・マシン」になります。

取り扱った概念やネーミングからこちらの方が有名となり一般に認知されたそうです。

この頃から「時間」という概念を取り扱った作品が増え始めるようになりました。

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「親殺しのパラドックス」とは

タイムマシン系の作品でよく出てくるのが「タイムパラドックス」という概念です。

この概念の要点をかいつまんで解説します。

親殺しのパラドックス

これは「過去にいって自分が生まれる前に、自分の親がいなくなったらどうなるか」というテーマ。

別に殺す必要はなく「両親の出会いを妨害する」「両親を別々の人と結ばれるよう誘導する」といった穏便な方法もありますが。

キモとなるのは「自分で自分が産まれることを妨害する」という点。

A氏が過去に行く

A氏の両親の出会いなどを妨害

結果A氏(赤ちゃん)が生まれない

A氏が存在しなくなる

じゃあ過去に来たA氏は誰?
or
A氏がいなくなるなら、妨害もできないんじゃ?

過去にA氏が産まれないのに、未来から来たA氏は何者なのか?。

A氏が産まれないなら、そもそも過去に来ることも、両親の出会いを妨害することもできないのでは?。

要は「過去でA氏を消したなら、当然未来でもA氏は存在しない」。

しかし「過去のA氏を消したのは、いるはずの無くなる未来のA氏本人」。

これがパラドックス(矛盾)となり、ややこしい事態になります。

卵が先か鶏が先か

もうひとつの例として「結果が原因になる」というタイムパラドックス。

普通は「過去の出来事があって未来ができる」のが当然です。

しかしタイムスリップが絡むと「未来の出来事が過去をつくる」と矛盾するようなことも起きます。

例えばAという科学者が未来から送られてきた「設計図」によってとある発明をしたとします。

そして何年か経ってタイムマシンができ、未来のAは過去の自分に発明したものの設計図を送ります。

こうしないと過去の自分が設計図を受け取れないため、矛盾を無くさないように行動する必要が出てきます。

しかしこの場合未来から送られてきた「設計図」はどこから・どのタイミングできたのか?

過去の自分は未来の自分から送られたから。

その未来の自分は過去に送られてきたから同じことをした。

…と事象がループしているように見えて実はそうでもなかったり。

「最初に設計図が送られたのはいつなのか?」という矛盾がこのタイムパラドックスになります。

遡った時間が長いほど影響が出る

タイムパラドックスで過去を変えると、未来に対して多かれ少なかれ影響が出ます。

そして遡った時間が過去になればなるほど未来への影響は大きくなるといわれています。

ここで「バタフライエフェクト」という概念が出てきます。

バタフライエフェクト(蝶の羽ばたき)とは1982年にアメリカの気象学者エドワード・ローレンス氏が提唱した考え。

有名な例が「ブラジルで蝶が羽ばたけば、テキサスで竜巻が起きる」というもの。

蝶の羽ばたきのようなちっぽけなものでも、巡り巡って遠い地での現象の引き金になるという考えです。

いってしまえば壮大な連鎖反応、ピタゴラスイッチみたいなものです。

例えば小石を動かしただけでも、のちのち重大な影響を与える可能性があるというもの。

例として

小石を動かす

誰かが蹴る

蹴った先が道路の中

小石を轢いたらタイヤがパンクした

本来の過去に小石は動かされていないため事故は起きません。

しかし小石を動かしたことによって起きるはずのない事故が起きたというわけです。

これが現在から見て1年前といった直近の時間なら影響は少なく済むことも多いです。

ただ100年・1000年といった遠い過去の歴史を変えれば、現在における影響は大きくなります。

例えばこの事故で死んだ人が未来の高名な発明者だった場合。

この人が発明するものすべてが存在しなくなります。

例として分かりやすいのが「サウンドオブサンダー」という映画です。

この映画では恐竜の時代に蝶一匹踏みつぶしただけで、人類が魚類染みた水棲人のような種族に変わってしまうというもの。

過去にるほど現在に与える影響は池に投げ込んだ石による波のように広範囲・大規模になっていきます。

最終的には誰にも予測できなくなっていくという考えです。

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過去を変えることによる影響についての考え方

過去を変えることによる現在に対する影響についての考え方はいくつかあります。

そしてこれは存在する時間軸が一つだけの場合に起きうるパターンです。

①変えられる

過去へのタイムスリップの目的ですが、当然変えられるという結末もあります。

ただ特殊な例もあるので別々に解説します。

誰も認識していない

あまり多くない表現ですが過去を改変したことに誰も気づかないというもの。

それこそ変えた本人すら認識できなくなることも。

過去を変えた瞬間にその時間から消滅し元いた時代に戻され、そのまま変化した世界を生きていくといったものです。

ただこの場合論理的な説明が難しいです。

「変えた自分の消滅」は後述する「現在の消滅」といった説明もできるので、あまり主流ではない考え方といえます。

自分だけ認識している

過去を改変したことによって未来が変わる。

しかしその「変わった」というのを認識できるのが変えた本人たちだけというもの。

未来に帰ったあとに変えた過去の出来事を「〇〇ってことがあったよね?」と誰かに問いかけます。

しかし「そんなことあったっけ?」と返されるというケース。

あるいは存在しないはずの人がいても、変えた本人達以外は特に不思議がってはいないことも。

タイムマシンを扱った作品ではありませんが、「ジュマンジ ウェルカム トゥ ジャングル」という映画で似たことが起きてます。

当初は過去に行方不明になった人の家が(物理的にも家庭環境的にも)荒れた状態でした。

しかし、その人を救い出して現在に戻ってきたら普通に円満な家庭を築いていたりしました。

②現在の消滅

過去を変えたことにより現在が消滅するという考えです。

「親殺しのパラドックス」に対する答えのひとつでもあります。

例え過去に小石1つ動かしただけでも「小石1つ動いた世界」になります。

そのため「動いていない現在」はその矛盾の結果消滅するというもの。

さきほど紹介した映画「サウンドオブサンダー」では過去に蝶一匹を踏みつぶした結果、作中の自体になっています。

しかし蝶を踏みつぶす場面に介入して防いだ瞬間、「防いだほうの人物」が消え去っています

これは蝶を踏みつぶさないよう介入した結果「変わってしまった現在」の原因が無くなったから。

それを防ぎにきた本人もろともに消滅したともとれます。

③変えられない

過去はどうやっても変えられないという考え方。

いくつかパターンがあるので別々に解説します。

過程すら変えられない

どう過去を変えようとしても失敗する・同じ結果になるというもの。

これは現在という「結果」が決まっている以上、それを変えることはできないという考えです。

「親殺しのパラドックス」で例えてみます。

未来のA氏が過去の両親の出会いを妨害しようにも、逆に自分が妨害される

かなり特殊だと妨害しようとした瞬間、何らかの力でA氏が消滅・あるいは現在に戻されるといったことも。

このあたりは絶対に変えられない運命「アカシックレコード」にも繋がってきます。

別記事にまとめてあるので興味がある人は参考にしてください。

「運命」「アカシックレコード」とは? アニメ・漫画などの各メディアでの考え方や扱われ方

結果が同じになる

過程を変えたとしても、結局似たような結果になるパターンです。

2002年の映画「タイムマシン」では主人公が強盗に殺された恋人の死を覆すためタイムスリップします。

が、強盗による死を防いでも別の事故に遭って死亡しています

このように過程を問わず「結果そのものが決定している」という場合があります。

あるいは「ある要素があるかぎり特定の結果になる」といったパターンもあります。

「ドラえもん」の主人公のび太の子孫のセワシがそれにあたります。

本来はのび太とジャイ子の子孫であるはずセワシ。

しかしドラえもんが現代に来たことにより、のび太としずかが結婚することになります。

この場合遺伝子レベルで違いが出ているのにセワシが存在していることになります。

結論として「のび太の子孫である限り〇〇になる」という運命付けがされていると見ることも可能です。

結果が原因になる

少々特殊な例で「未来から来た結果が未来を決定づける」「過去と未来がループする」というパターン。

この場合は未来で発生したものが現在に来たことにより、その未来へと進む原因になるというもの。

映画「ジュブナイル」では主人公の少年の元に、未来の自分がつくったロボットがタイムスリップしてきます。

結果的にそのロボットは故障してしまうことになります。

しかし少年は未来にそのロボットを修復してまた過去へと送っています。

こうした結果ロボットが起点となって過去と未来がループすることになってます。

またこの場合ロボットは修復されただけで誰かによってつくられたわけではないです。

つまり「ループの最初のロボットはどこからきたのか?」という問題も発生します。

ただこれは後述のタイムパラドックスは起きない理由で解説する「複数ある時間軸」で説明がつきます。

タイムパラドックスは起きない?

最近では「過去改変の影響は無い」という考えも出てきました。

それが「別の時間軸」「並行世界」といった概念を取り込んだもの。

さきほどの解説は「存在する時間軸が一つの場合」です。

ここからは「存在する時間軸は複数ある」「いくつも世界がある(生まれる)」といった概念を取り込んでの考察になります。

別の未来が生まれる

これは過去を変えたことにより別の未来が生まれるため、本来の未来は変わりなく存在しているという考えです。

ドラゴンボール

中盤で悟空が死んでしまった未来からベジータとブルマのトランクスがやってきます。

その役目は「梧空の死因の病気を治療するため」と「自分を鍛えてもらう」というもの。

結果としては過去改変は成功して梧空は死なずに済みました。

しかしトランクスが元居た時代に戻っても変わらず梧空は死んだままでした。

もちろん梧空が生存している世界も間違いなく存在しています。

これはある地点の時間までは同じ流れだったが、トランクスが来た時点で枝分かれしたと考えるのが妥当です。

図のように「A」という時間軸の未来から過去にタイムスリップします。

そうして過去を改変すると本来の流れから変わり、赤線の先の「A’」という未来に分岐します。

こうして過去を変えた結果別々の未来ができるという考え方もできます。

ターミネーター

アーノルド・シュワルツネッガー主演の「ターミネーター」。

この作品では過去にターミネーターが来たことにより未来にズレが存在しています。

これもドラゴンボールのような時間の流れになりますが、こちらは分岐が多数発生しています。

例えば「ターミネーター3」では未来で本来生きている人物が次々抹殺されています。

しかし「生存していた」という記録が明確に残っていることに。

そして「ターミネーター4」では本来存在しなかったタイプのターミネーター(サイボーグ型)の登場。

予定より早く新型のターミネーターが開発されたりと本来の未来とはズレが出ています。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス」や「ターミネーター:ニューフェイト」では完全に過去あるいは未来が変わっています。

しかし相変わらず過去にターミネーターが送り込まれています。

作品通してのキーバーソンのジョン・コナーが「ターミネーター3」では未来でターミネーターに殺され。

「ターミネーター:新起動/ジェニシス」では別のターミネーターによって新型のターミネーターに改造されています。

「ターミネーター:ニューフェイト」では成人前に死亡していたり

こうしたかなりの差があるにも関わらず、「ジョンが生存しているからターミネーターが過去に送り込まれる」ということは変わっていません。

これも過去に干渉したことにより別の未来が生まれたためと考えられます。

別の世界の過去にタイムスリップしている

別の捉え方もありそもそも自分たちが辿った過去に跳んでいないという解釈です。

例えば自分の時間軸がAとして、Aの過去に跳んだつもりがA’というかなり似た時間軸の過去に跳んでいたというもの。

「A」の時間軸の未来からタイムスリップしたと思っても、実は「A’」というよく似た別の世界の過去に移動しています。

「ターミネーター」のように「未来でタイムスリップする」という世界(作品)では、これで説明ができます。

この場合はタイムスリップというよりも「並行世界A’の〇年□月△日に行った」というのが正しいかもしれません。

これはタイムマシンというよりは世界移動装置(次元転移装置)を使ったということ。

いくらA’の世界で行動して改変しようとも、そもそも自分がいた世界(時間軸)ではないので、自分の世界に変化はありません。

前述のターミネーターなどのストーリーではこちらの説も当てはまります。

この理論では「タイムスリップはできない」という解釈も含んでいます。

過去改変したら自分の時代に戻れない?

過去を改変したあとに自分のいた現在(未来)に戻ろうとしても戻れないという説もあります。

おおまかに2つのパターンがあります。

①自分の時代が改変された

こちらは「過去を変えたせいで、それに合わせて未来も無くなった」という理屈です。

自分がいた未来が存在しないので、当然戻ることはできません。

このパターンではそもそもの過去改変の目的を果たした結果で、タイムマシンを用いた作品でのオーソドックスな結末になります。

「過去を変えた本人だけは未来が変わったことを認識している」というのもこれに当たります。

②自分の時代じゃない

稀なケースですが内容は少々深刻で、自分がいた本来の時代にたどり着けないということもあります。

まず未来が分岐するパターンにおいてA’になるよう過去を変えます。

するとA’の時間軸に入ってしまい本来のAの時間の流れが断絶してしまいます

そうなると時間のみを遡るだけのタイムマシンでは断たれた時間の流れを辿れず、その時間軸の流れに流されてしまいます。

この場合は自分の元居た時代に戻るには、タイムマシンの機能に加え並行世界を渡る機能も必要になってきます。

簡単に説明すると

①Aの時間軸で過去を変える

②時間の流れが変わりA’の世界が生まれる

③時間の流れに沿ってA’の未来へ

④A’の時点で並行世界Aへ移動

⑤自分の元居た時代に帰還

という流れになります。

こういった表現をする作品は稀ですが、こういうケースもあると思ってください。

これを理解していないと、実際は別の世界(未来)に紛れ込んでいるという事態にもなります。

たまにその世界の別の自分と鉢合わせする、といった描写がされることも。

これはA’における自分自身です。

A’の自分はタイプスリップしていない(する理由が消滅した)ためです。

総評

結論ですがタイムマシンが絡む概念は複雑極まりない。

これに尽きると思います。

いろいろ説を挙げてきましたが、結局のところ「こうなる可能性がある」の域を出ません。

そもそもタイムマシンが完成していない以上、どういった事態になるかも定かではないです。

タイムマシンを扱う作品では、過去を変える危険性も描かれているものも多いです。

「過去を変えることは今の否定」なんて感情論で過去改変を否定する理論もあります。

どんな危険を内包しているかもわかりません。

例えタイムマシンができたとしても、安易に使うべきじゃないのかもしれません。

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