ダンボールは安全に土に還るのか? 畑に使っても大丈夫なのか

2025年11月3日園芸知識園芸,土づくり,堆肥,家庭菜園

園芸で段ボールを敷くことで「土が肥える」「ミミズのエサになる」「雑草が生えなくなる」なんてのを時々目にします。

確かに段ボールに含まれる炭素分はミミズのエサになったり、養分になったりと有効な成分です。

しかし、そもそもダンボールに含まれるすべての成分は安全に土に還るのか?

あるいはダンボールによっては安全だったり、逆に害になるなんてのもあるのか?

そのあたりを調べてみました。

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ダンボールの原材料

まずダンボールの材料は以下の3つ。

・パルプ
・古紙
・接着剤

パルプは木から作ったチップのようなもので、木の繊維を取り出して固めたものです。

機械で押しつぶして取り出す「機械パルプ」、薬品で繊維のみを取り出す「化学パルプ」、あるいは古紙を再利用して作る「再生パルプ」の3種類が主なパルプの内訳になります。

パルプは紙全般の材料となるため、本の紙や新聞紙などもパルプから作られています。

ただ紙そのものを頑丈にしたり防水性にしたりする場合もあるため、紙の製法そのものは多岐に渡ります。

そしてダンボール特有の二重構造になるように接着するための糊として「コーンスターチ」か、悪影響が少ないタイプの「エマルジョン系接着剤」を使っています。

コーンスターチはとうもろこしから作る自然な糊で、パルプ同様に人体に害はありません。

ただエマルジョン系接着剤は化学成分なども入っているため、害が少ないタイプでも注意が必要です。

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製造過程で有害物質は入るのか?

ダンボールの原材料であるパルプはほぼ無害といって良いです。

しかし製造過程で有害なものが混入したりしないのか?

わかりやすいもので言えば「パルプ製造工程で薬品を使う」「古紙についた塗料」「ダンボールの色」「ダンボールに書いた文字や絵柄」などがあります。

これらの成分は完成品のダンボールに残るのかや、成分が有害かどうかが問題になります。

パルプ製造での薬品

先述した通り、パルプを製造する過程で薬品を使って繊維を取り出す工程があります。

繊維を取り出すとき、この2種類の薬品のどちらかを使うのが主流です。

・苛性ソーダ
・硫化ソーダ

これらは劇薬の分類となるため、安全性のためにも完全に除去されるのが望ましいとされています。

パルプ製造過程では使った廃液を可能な限り回収し、また再生利用する方法が取られています。

この工程では「黒液」という繊維以外の成分が溶けた液体が生成され、その黒液を取り除いた繊維のみを大量の水で洗浄します。

苛性ソーダや硫化ソーダは水によく溶けやすいため、ここで残った薬品を取り除きます。

そして次のパルプを漂白する工程で使う薬品のどれかを使います。

・過酸化水素
・二酸化塩素
・オゾン
・塩素
・酸素

これらの漂白成分も水に溶けやすく、これまた大量の水で成分を薄くしていく方法で除去できます。

そして熱といった外的要因でも分解してしまうため、製造直後のダンボールに少量残っていても自然に無くなってしまいます。

わかりやすい例として、水道水に含まれる塩素は光に当てるとその熱で抜けていく、というものでしょうか。

こうしてパルプそのものを作る際の薬品は取り除かれていきます

古紙を材料としたパルプでも同様の方法が取られており、古紙についた文字や絵の塗料もしっかり除去されています。

接着剤

材料の項目でも少し触れましたが、ダンボールは2重構造にするために原紙同士を接着する接着剤が使われています。

コーンスターチがメインの糊なら、原料はとうもろこしなので無害といえます。

問題なのがエマルジョン系接着剤

近年では安全性の高い「ノンフタル酸エステル」「ノンキシレン」「ノントルエン」という成分の接着剤が使われているようです。

これらの成分は環境に対する悪影響を無くすために使われているもので、一般的な使い方ならば人体にはほぼ無害といえます。

ただ食べるものに付着しているとなると話は別です。

どれも「環境に配慮」「もし少量が人体に入ってもすぐに悪影響はない」といった見方がされているもので、常用的に摂取されることは想定していません。

そして無害なコーンスターチ製の接着剤かの見分けが困難な点もあります。

接着剤の観点からいえば、畑に使うのは必ずしも安全とはいえないです。

ダンボールの色

一般的なダンボールの色は茶色っぽい色ですが、白に塗装されたようなダンボールもあります。

まず一般的なダンボールの色は茶色で、これは原料の木材や古紙に含まれる「リグニン」という成分が理由です。

これは自然な成分なので問題無し。

値段が最低値だったりする安いダンボールはこれになります。

裏面含めて白色のダンボールの場合は「バージンパルプ」という、純粋なパルプが使われていることが多いです。

バージンパルプは古紙などを使っていない、純粋な木材からのみ作られているパルプで、耐久性が高いという特徴があります。

こうした理由から茶・白のダンボールは塗装をしていないため成分上はほぼ無害といえます。

問題なのは別の色がついたダンボールの場合。

種類は少ないですが黒や赤、青といった色のダンボールだと顔料に有害物質が混ざっている可能性があります。

昨今では有害な重金属といった成分が混ざった顔料は使われないか、問題無い量まで少なくなっていますが、それでも土壌に成分が堆積する可能性を考えると危険性は拭えません。

あくまで「通常の使用」を想定した安全基準で、間違っても「作物の肥料に使う」ことは想定されていません

段ボールに書かれた文字や絵

現在のダンボールには有害性の低い「フレキソインキ」という分類のインクが使われているようです。

元々は「油性インキ」や「速乾性インキ」という、人体に有害な成分の重金属や有機溶剤を含むインクが使われてました。

しかしそれでは人体や環境に害があるため、現在はできる無害なインクに切り替えています。

ただ無害といっても、それは肌に接触したりごく少量が体内に入った場合を想定したもの。

こちらもダンボールに使われる顔料と同じく。野菜などに蓄積・濃縮されたものが人体に入り込むことは想定していないです。

こちらの点からも、できる限り絵や文字が書かれたダンボールは使わない方が良いでしょう。

総評:畑に使うのは完全に安全とはいえない

ダンボールの材料そのものの安全性はかなり高いものがありますが、やはり着色に使われている塗料・顔料の面では不安が残ります。

よく聞く「自然にやさしい」といった謳い文句は、あくまで公害などを引き起こすほどではないレベルでの安全基準と思った方が良いです。

ダンボールの本来の用途から考えても、わざわざ畑にダンボールを使うことは推奨されていませんし、あえて人体に取り込む可能性を高くするような行為も同じくです。

ダンボール1個1個の有害性はさほど高くないにしても、それが数十・数百となれば相当な量になるでしょうし、土に滞留する・作物に濃縮されることを考えるとおすすめはできません。

花壇といった花などの観賞用の植物ならそこまで問題はないでしょうが、食べる目的の作物に対してはダンボールを使わないほうが無難といえるでしょう。

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